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第69話

百と千歳は、俺の考えてることが何となく分かってるんだろう。宥めるようなそんな空気を感じるし、そんな目をしている。 まったくふたりとも俺には甘いんだから。 俺も甘えちゃうけど。 「今日から筋トレしよー。それより、」 「えっ、するの?」 「えっ、するんですか?」 茅ヶ崎と柳木くんの声が重なった。 「どういう意味…?」 何でふたりに『えっ』とか言われなきゃいけないの? 俺の不満げな目に、柳木くんが焦ったように口を開いた。 「いやあのっ、しないでほしいとかじゃなくてっ」 「ムキムキにはなってほしくないなぁ~、ってぇ~」 「ならないよ。なるわけないじゃん」 「蜜の場合は筋肉になる肉をつけるところからだな」 「こら、千歳」 珍しく千歳が百に窘められてる。 「ごはんはいつもちゃんと食べてるじゃん」 「肉がつきづらいってか、太りにくい体質なんだろ。柊子(しゅうこ)さんもほっそりしてるもんな」 「あー、そうだね」 百の言う通り、母さんはスリムな体型だ。遺伝かなぁ。あ、柊子さんって俺の母さんね。 「女王様ほんとにウエスト細いよねぇ~。触っていい~?」 「いいわけないでしょ」 百と千歳を楯にする。 脇腹弱いんだよ。それを茅ヶ崎に知られたら何だかめんどくさいことになりそうだもん。 ついでに言うなら背中も弱いし。バレたらだめ。 「ちぇ~っ」 「残念だったな、茅ヶ崎」 「藤くんと須賀谷くんいるからねぇ~、無理だとは思ってたよぉ」 茅ヶ崎はそう言って、近くの服を手に取る。 そうじゃん、まずは買い物じゃん。 俺はあんまりほしいのないから…ぶらぶらしてよ。 千歳と茅ヶ崎がそれぞれ買い物をして、俺は百と柳木くんと一緒に店内をぐるっと回る。サイズがなかなかないのって不便だよね。 「おっまたせぇ~」 「待たせて悪かったな」 そこへお会計を終えた2人が合流。 「ううん。じゃ、シェイク買いに行こー」 俺の今日の目的はシェイク。今日は何にしようかな。ここのシェイクのお店は色んな味があるから、選ぶのも楽しい。 「百 何にする?」 「ほうじ茶」 「千歳は?」 「黒ごま、かな」 「そっかぁ」 うーん…。抹茶…黒蜜きな粉も美味しそう。でもキャラメルもいいな。 「僕ココナッツにしよ~」 「俺はコーヒー」 みんな選ぶの早いんだから。えっと今日は…キャラメルにしよう。 各々注文したものを片手に、またモールをぶらぶら。

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