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第84話
「あっ、女王様たちもう来てたんだぁ~」
おはよぉ~、って言いながらこっちに来る茅ヶ崎に挨拶を返して、何かあったのか尋ねる。と。
「笹山先輩、昨日みたいに待ってたよぉ~」
「…頼んでないし」
「早く出てよかったな」
「まったくだ」
マジでしつこい。言いたくないけどほんとストーカー味を帯びてるんじゃ…。
「あんなに執着強いとはねぇ~。びっくりぃ~」
「びっくりで済ませていいの? これ」
ダメなんじゃないの?
「あそこまでされると100年の恋も冷めるって言うかぁ~」
「冷めるね」
「即答ぅ~」
茅ヶ崎はケラケラと笑った。
笑い事じゃないんだけどな。
「まぁ放課後 話することにしたから」
「え、それ大丈夫なのぉ?」
「千歳も百も一緒だし。こっそり」
「なら大丈夫だねぇ~」
俺一人では大丈夫と思われてない。俺も大丈夫と思ってないけどさ。
「笹山先輩もさぁ~、モテるんだから他に目を向ければいいのにねぇ~。片方が無理と思ったなら、それはもう無理なんだからさぁ~。女王様はどんどん告白されてるしさぁ~」
「別にどんどんじゃないけど」
「えぇ~? そうかなぁ。ってか女王様いいもの食べてるねぇ」
「これ委員長からもらった」
「委員長、抜け駆けしてなぁいぃ~?」
「ふふん。何とでも言えばいいさ」
メガネのブリッジを押し上げながら不敵に笑うのが様になってる委員長。
「でもいいもんねぇ~。僕 再来週一緒に出かけるもぉ~ん」
「あっ、ズルいぞ茅ヶ崎」
「ふふ~ん。何とでも言えばいいよぉ~」
楽しそうでいいね、ふたり。
シュークリームを食べ終わって、千歳がくれたウェットティッシュで口と手を拭く。
「須賀谷くん、準備いいねぇ~」
「色々用意はしてある」
「さっすがぁ!」
千歳はマメな男なんだよ。
そのマメさを今は俺が独り占めしてるけどね。
「百、お茶ちょうだーい」
「飲みかけだけどいいか?」
「うん」
ペットボトルを受け取って口をつける。
「藤くん、それ次回してぇ~」
「よからぬこと考えてそうだから止めとく」
「断り方が的確ぅ~!」
「何で茅ヶ崎 嬉しそうなの?」
「藤くんの雑な対応にきゅんきゅんしてるのぉ~」
「諦めてないな」
百がちょっとSっぽいからって、まったく。
「なに、茅ヶ崎これできゅんきゅんすんの?」
「藤くんからだからするよねぇ~」
「他だったら?」
「無」
無。
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