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第91話
「ちゅーしたくなる?」
「見慣れてても可愛いな、とは思う」
「ちゅーする?」
「なに蜜、したいの?」
「んー分かんない」
出来る出来ないで言えば出来るけど。
「ふぅん?」
百がちょっと首を傾げて、それから千歳の膝に転がる俺の唇に触れた。
唇で。
ちゅっ、と軽い音を立てて柔らかい唇が離れる。
「どんな感じ?」
「百 慣れてない?」
「そっちの感想?」
笑われた。
だって実にスマートだったよ。するまでの流れが。
「んーと、柔らかかった。あと何かえっち」
「そうか?」
「俺は一連の流れを見せられてどんな反応すればいい?」
とか言いつつ、千歳は全く困惑してなかった。
「千歳もちょっとしてみてよ」
「仕方ないな」
俺の髪を撫でながら苦笑した千歳は、そのまま俺の唇にキスをする。
「んー千歳の方が丁寧な感じ?」
「丁寧?」
「百もしてもらいなよ。そしたら分かるよ」
「うん、それはいいかな」
「俺は百の『えっちな感じ』ってのが気になるけどな」
「千歳こーいうのもっと淡白じゃねぇ?」
「そうか?」
うーん。淡白な千歳が気にする百のキスってちょっと良くない?
何か萌える。
「百、ちょっともっかい」
「はいはい」
唇がくっついて優しく食まれる。気持ちいいと思うくらいには慣れてるし、えっちな感じがするんだけどなぁ。
「ん、ん…」
鼻にかかった声が出て、ちょっと恥ずかしくなる。
「ぁん、む…」
こういう声って、もちろん聞かせたことないから。
「っふ、」
「千歳に代わる?」
「ん。」
俺もか、って笑った千歳が優しく唇を重ねて。
「ん…」
どっちも好きだなぁ、なんて、贅沢なことを考えていた。
何か…もちろん香月さんみたいにえっちな下心がないからではあるんだけど、香月さんとするより気持ちいいって言うか、優しいって言うか…。たまにしたい感じがする。
これ茅ヶ崎に知られたらめんどくさいことになりそうだなぁ。
ズルいとか言われそう。
「っていうか、茅ヶ崎は蜜を狙ってんだから俺らが『ズルい』って言われんじゃねぇの、それ」
「そうかなぁ」
夕飯の時間に、食堂へ向かいながら話す。
「じゃあ僕ともしてよ!って言いそうだよな、茅ヶ崎は」
「分かる」
そうなの? それ言われるの千歳と百じゃないの?
「呼んだぁ~?」
「「呼んでない」」
「ちょっと藤くんと須賀谷くん、即答ひどくなぁ~い?」
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