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第93話

「そりゃ、相手が女王様ならキスするだけじゃ済まないよねぇ~」 「キスもさせない」 「あ~ん、意地悪ぅ~」 意地悪じゃないでしょ。 「まぁでもそれくらいの方がじわじわそそられるよねぇ~」 「うわ、逆効果」 思わず百と千歳を盾にする。 千歳がため息をついた。 「あんまり蜜を怖がらせるなよ。接触禁止にするぞ」 「それはやだから控えめにしとくねぇ~」 「視線が控えめじゃねぇんだよなぁ」 「えぇ~藤くんそこは見逃してよぉ~」 視線が控えめじゃないって言われてる。 とりあえずごはん行こう。 百と千歳を盾にしたまま食堂へ。 茅ヶ崎はにまにましながらついてきてるけど…強かだな。まぁ強かじゃなきゃ、腕の自由奪ってぐっちゃぐっちゃのどろっどろにして遊んだりしないか。しないな。 食堂に入ると、芝木さん(名前覚えた!)と目が合った。 何だろ。今日 香月さんと会ったからかな。 そんなことを思いながら夕飯を受け取ってテーブルに着くと、芝木さんの方から寄ってきた。 「…女王様」 どうでもいいけどその呼び方定着しちゃったんだね。 「何? あ、中矢先輩との連絡ありがとね」 「あっ、はい! ってそれよりも! か、Kくんとはどうなりましたか…? Kくん今日ずっと落ち着かなくて…」 「うん。別れたよ」 「あ、そうなん…えっ」 「何? 不満? あの人狙ってるんでしょ? なら俺たちが別れたって不満なくない?」 何で『えっ』なの? 「えっ、あっ、だって…かづ、Kくん、未練たらたらだったから…!」 「でも別れたものは別れたもん。これから頑張ってアピールしてね?」 「え…えっと…はい…?」 返事が疑問系。 まだ困惑顔の芝木さんをそのままに、俺は箸を取る。 今日は鱈のフライ。タルタルソースがおいしい。 ちなみに百はタルタルソースがあんまり得意じゃないから、タルタルソースだけを俺にくれる。 タルタルソースをたっぷりのせて(何せ2人分あるから)、フライを食べる。おいし。 「…ってか近くない?」 芝木さんも食べなよ。そんな気持ちを込めて柴木さんを見る。めちゃめちゃ近くで見られてるんだけど。食べづらいわ。 「あっ、すみません。唇見てました」 「正直に言えばいいってもんじゃない。茅ヶ崎、ぎゅってやって差し上げな」 「はぁ~いっ!」 「ちょ! それだけはストップ! 痛かったから!」 「茅ヶ崎、Go」 「承知ぃ~!」 「やめ、ちょ、いだだだだ!!」 今度はうでうでうでって言わないんだ。

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