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第94話
「何これ! 何なの!? 握力何なの!?」
握力ゴリラなの。
「握力は鍛えとかないとねぇ~いざと言うとき困るからぁ~」
茅ヶ崎の言う『いざと言うとき』って俺たちが思う『いざと言うとき』と違う。絶対違う。
だって相手が油断してるところで腕の自由奪う時のことだもん。
「今は『いざと言うとき』じゃないよね!?」
「でも女王様の命令だったからぁ~」
「素直…」
「女王様、ご褒美くれるでしょぉ~?」
「はい」
「う~ん、ミニトマトが欲しいわけじゃないんだよなぁ~」
やだよ。まともに聞いたら何かえっちなこと要求されそうだもん。
茅ヶ崎のお皿にミニトマトを転がして食事を続ける俺。
「俺ミニトマト好きなんだから。感謝しなよね」
「ミニトマトにキスしてからちょうだぁ~い」
「百、茅ヶ崎やだ」
「俺いまダブルクリップ持ってんだよね。洗濯ばさみの代わりにはなるよな」
「ごめんなさぁいぃ~」
乳首の位置を手でガードする茅ヶ崎。
「あ、でも藤くんにされるならいいかもぉ~」
「マジ? わさび塗っていい?」
「ごめんなさぁいぃ~」
それは嫌なんだ。
「乳首に塗っていい食べ物は生クリームとチョコと練乳と蜂蜜だけだと思ってるからぁ」
「へぇ? けどイチゴで遊んでやったことあるんじゃねぇの?」
「えっ、嘘。何で藤くん知ってるのぉ~?」
百は意味ありげに にんまり笑っただけだった。
っていうか、イチゴで遊ぶって何? イチゴで乳首遊ぶの? 遊んでやった、ってどういう状況? ってかどうやって遊ぶの?
そして千歳が嫌なものを見る目してる。
「何をしてるんだ…まったく」
「須賀谷くんに呆れられちゃったぁ~」
「ねぇ百、イチゴで乳首遊ぶって…」
「せめて千歳がいないとこで聞いてくれ」
「おいこら」
ダメか。教えてもらえないか。
ってか、食べ物で遊んじゃいけないよ?
「その遊んだイチゴどうしたの?」
「大丈夫ぅ。ちゃあんと食べたよぉ~」
ならいっか。
「食べたの茅ヶ崎じゃねーだろ?」
「うふふ~。でもイチゴ無駄にはしてないよぉ~」
世の中には、俺には分からない遊びがあるようで。
とりあえずイチゴは普通に食べさせてほしい。
練乳とか何もかけないで食べたいな。
「蜜、ミニトマトいる?」
「いるいる~」
百からミニトマトもらう。
「僕がキスしたミニトマトあげるのにぃ~」
「それはいい」
「振られちゃったぁ~」
茅ヶ崎がけらけら笑った。
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