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第112話
時間も待ち合わせ方法も決まったし、あとは当日を待つだけ。
何着ていこうかなー、って考えたり、靴を選んだりして、遊びに行く日を迎えた。
「晴れて良かったよねー」
「ほんとだねぇ~」
休みの日だから電車はほどほどに混んでいる。
茅ヶ崎はちょっと眠そう。
でも、これで「寝不足?」なんて聞こうもんなら、えっちな話題が出てくるに違いないと思ってるから聞かない。電車の中だし。
学校でだったら聞くけど、さすがに公共交通機関ではね。
「女王様ってぇ」
「ちょっと茅ヶ崎、さすがに電車の中ではやめて」
「あ、いつものクセでぇ~。ごめぇん~」
人前で女王様って呼ばれるのはさすがに…ここ学校じゃないし…。
「でもうっかり出ちゃいそぉ~。なんて呼べばい~いぃ~?」
「ふつーに相瀬でいいよ」
「なるべく気を付けるねぇ~」
「絶対気を付けてよ」
「でもぉ~、女の子にも見えるから良くなぁいぃ~?」
「よくないわ」
いくら可愛いからってさすがに女の子には見えなくない?
と思って千歳と百を見上げる。
…美形と男前ってさ、何着ても似合うのずるいよね。
「女の子…に、見えなくもない」
「そうだな」
「否定して、ふたりとも」
俺の服装が悪いの? そりゃ、今日着てるの全部レディースのだけどさ…。シンプルなのだし。
何か釈然としなくて、立ってる百に寄りかかる。百は笑って俺の体に腕を回した。
「蜜、俺のスマホ持ってて。柳木くんから連絡入ると思うから」
「いいけど」
「片手つり革だし、もう片方は蜜抱えてないとだから手が空かねーの」
「それならしょうがないね」
百からスマホを受けとると、ちょうど柳木くんからLINEが入った。
「駅着いたって」
「2両目乗ってるって送って」
「うん」
2両目に乗ってるよ、ってLINEを送ると、可愛い犬のスタンプでOKって返事が返ってきた。
そう言えば俺、柳木くんの連絡先知らないな。友達なのに。
なんて思っているうちに電車は駅に着いた。
ドアの向こうに、柳木くんと衛宮くんの姿。手を振ると、柳木くんもにっこり笑って振り返してくれた。
「…めちゃくちゃ目立ってるぞ」
「おはよう。何で開口一番それなの?」
「おはようございます。衛宮がすみません」
「距離近ぇんだよ」
「羨ましいなら羨ましいって素直に言えよ?」
「そうじゃねーですけど!?」
百にからかわれる衛宮くん。
「羨ましいんだねぇ~」
「だから違ぇって」
「素直じゃないな」
「何なのこの人たち!」
茅ヶ崎にも千歳にもからかわれてる。思わずちょっと笑ってしまった。
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