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第115話

「あの…須賀谷くん」 「? どうした?」 「その…ふ、服とか、掴んでてもいいですか…?」 柳木くんからの控えめな申し出に、千歳は笑う。 「真っ暗だからな。はぐれたら困るし、それは構わない」 「ありがとうございます!」 「じゃあ僕も衛宮くんのとこ掴まってよぉ~」 「絶対変なことするなよ!?」 「変なことなんてしないよぉ~」 衛宮くん、それフラグ。 ドアが閉まれば、辺りは本当に真っ暗に。足元も見えないし、聴覚だけが冴えてきちゃって何だか…うん、ちょっと怖いかも。 ぼんやりした灯りのお化け屋敷なら大丈夫なのに。 俺は百の腰にぎゅっとしがみついた。 百の手が、宥めるように俺の手をぽんぽんと叩く。 「うわっ、ちょ、」 後ろで声が上がる。 「茅ヶ崎、変なとこ触るな!」 「だって見えないんだもん~」 「そりゃそうだけど…」 衛宮くん、その人多分わざとだよ。 「あ、今誰かに手ぇ握られた」 「うわぁぁ! びっくりした…」 「柳木、情けねぇ悲鳴――って茅ヶ崎! ケツを揉むな!」 「あ、ここお尻ぃ~?」 「茅ヶ崎は何やってるんだ…」 「だって見えないんだもん~」 茅ヶ崎は自分の欲求に忠実だね。 しばらく進むと、奥に明かりが見えてきた。 近づいて見れば、髑髏の中に蝋燭が入っていて、その炎がゆらゆらと揺れていた。 「分かれ道だな」 道は右と左、どちらか。 「どっちがいい?」 「えっとぉ~、僕は左ぃ~」 「じゃあ右だな」 「ちょっと藤くん~」 この二人だけ楽しそう。 右に進むと、古いぼろぼろの障子戸に突き当たった。 百がガラーっと開けると、 「うわぁぁ!!」 「っ、」 その部屋の中は薄暗く、粗末な仏壇の前にお婆さんが一人座っていた。あまりの気味の悪さに柳木くんは声を上げたし、俺に至っては声が出なかった。ので、ひしっと百に抱きつく。 「ちょ、え? ここ、ここ通るの…?」 「柳木、ビビりすぎじゃね?」 「衛宮うるさい」 百がひょいと踏み込んでいくので、必然的に俺も続く。その後にみんな続いて部屋を出ようとした時だった。 ガタン、と大きな音がした。 音がした方を見れば、お婆さんが鉈を持ってこっちを見ていた。 目が合うと、ニタリと笑う。 「わぁぁあぁ!!」 「柳木うるせえ!」 「だっ、うわ、ちょっ、だって…!」 「きゃ~こわぁい~」 「茅ヶ崎ぃ! どさくさに紛れて胸揉むな!」 何やってるの、茅ヶ崎。

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