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第116話
お婆さんが鉈を振り上げたのを見た途端、百が素早く俺を抱え上げ、それを合図にみんな駆け出した。
後ろからお婆さんが笑いながら追いかけてくる。鉈振り回しながらゲラゲラ笑ってるお婆さん地味に怖い。
「何あれ怖っ!」
「柳木は黙って足動かせ!」
「だって…うわぁぁぁ怖い!!」
「って藤棚よく相瀬抱えて走れるな!?」
「蜜くらいなら余裕」
「百が頼もしすぎてきゅんきゅんしちゃう」
「ひとりめっちゃ平和だな!?」
「おい、また分かれ道だぞ」
千歳の声に目を向ければ、突き当たりは二つに分かれていた。
「今度は左」
俺の声に、百は進路を左へ。曲がればまた戸があって、そこへ滑り込んで素早く閉めた。
「っはぁぁぁぁ…びっくりしたぁ…!」
「結構本格的なお化け屋敷だったねぇ~」
茅ヶ崎がそう言った直後、ドンドンドン!!と音が鳴って戸が大きく揺れた。
思わず身を固くしたけど、音はそれきり。戸も揺れることはなかった。
そうして今いるところを見回してみると、今度は奥に井戸があった。絶対あそこ怪しいじゃん。絶対なんかいるじゃん。
でもあそこ通らないと先には進めない。
「何出てくると思う?」
「今度はお爺さんかなぁ~」
「女じゃねぇの? 髪の長い」
何かな何かな、って警戒しながら進む。けど井戸からは何も出てこなくて、ちょっと拍子抜け。
なぁんだ、って思ったら。
「―――っばあ!!」
「ひゃあぁっ」
上から人が、バサッと逆さ吊りで現れた。
「女王様 今の悲鳴可愛いぃ~」
「今のはほんと可愛いかったです!」
「っもう! 何でみんなびっくりしないの!?」
「何か来るかな、って思っててぇ~」
「俺だって思ってたよ!」
上からとは思ってなかっただけ!
ひとりだけ声上げて恥ずかしい。
百の背中に顔をぐりぐりする。千歳が笑って、俺の髪を撫でた。
この後もお化け役の人に追いかけられたり脅かされたりしながらゴールを目指し、主に俺と柳木くんが「わぁ!」とか「ひゃあ!」とか声を上げては「可愛い」だの「うるさい」だの言われたりしながら、ようやく出口に辿り着いた。
「結構楽しかったねぇ~」
「ほんとだな」
「女王様可愛かったしねぇ~」
「柳木はうるさかったけどな」
「衛宮うるさい…」
心なしかぐったりした柳木くんと目が合う。
「大丈夫でしたか? …って俺が聞くのもアレだけど…」
「そんなことない。ありがと、心配してくれて」
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