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第117話
柳木くんは優しい。
俺はまだ百の腕の中にいたし、何なら千歳にも支えられてたけど、大丈夫と笑って見せた。
柳木くんも安心したみたいに笑っていた。
「次ジェットコースター乗るぅ~?」
「心臓に優しくないの立て続けに行かなくても…何かちょっと優しいやつ行こうよ」
茅ヶ崎の提案に乗らないでくれてありがとう、柳木くん。
「あ、これは? しろくまの生息する北極圏をVR体験」
「へぇ~そんなのあるんだぁ~。見てみたいかもぉ」
「スタンプラリーもあるんだな、これ。スタンプ全部揃えると、何かもらえるっぽい」
「やってみるぅ~?」
「マップ全員分取りに行くのめんどくせぇな…」
「じゃ、やめとこぉ~」
3人が話しているのを、俺はぼんやり眺めている。千歳と百がそばにいてくれて、髪を撫でたり背中をとんとんしてくれてるから気持ちは徐々に落ち着いてきた。
スタンプラリー、か。スタンプ見つけたら押しとこうかな…。
北極圏のVR体験でオーロラを見て感動したり、移動の合間にスタンプ見つけて押したり、園内を回っているしろくまを見つけて一緒に写真を撮ってもらったり展望台に上ったりして遊んでいるうちに、大分いい時間に。
そろそろフードコートも空いてるかな、って、みんなでお昼を食べに向かう。
しろくまランドのハンバーガーセットを頼んでかぶり付きながら、午後の予定を立てる。
混んでるから、回れるのは3つくらいかなぁ。
「観覧車乗りたい」
「ジェットコースターはぁ~?」
「午後イチでは乗りたくない」
「確かにそうだねぇ~」
ちょっと時間を遅くしたとは言え、フードコートはまだまだ混んでいる。遊びに来ているのは家族連れだけじゃなくて、男女のカップルもいるし、俺たちみたいに男の子のグループもいるし女の子のグループもいる。
そして、千歳と百を筆頭に目立つんだよね。
「みなさんお友達ですか? 良かったら午後あたしたちと一緒に回りません?」
なので、こんなお誘いも。
柳木くんは一瞬固まって、ポテトをお皿に落としていた。
「誘ってもらって嬉しいんだけど、今日は友達と回りたいんです。ごめんね?」
百が申し訳なさに可愛らしさを織り交ぜてお断りする。そういうとこ、ほんと器用だなって思う。こういうの慣れてるのもあるんだろうけど。
「そっかぁ~、残念だけど…」
相手の女の子もしつこくなく、断られたらあっさり引いてくれた。
「藤棚くん、慣れてますね。さすが」
「? そうか?」
柳木くんは手から落ちたポテトをつまんで口へ。
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