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第119話

「別に羨ましかねーけど」 「そっかぁ~」 相づちを打った茅ヶ崎は既に違う方を見ていて、衛宮くんは『何だこいつ』って表情を隠していなかった。素直だね。 観覧車が一周して、下に降りる。 次はジェットコースター。こっちもなかなか混んでいて、また並んで他愛ない話をして過ごす。 ところで俺はジェットコースターは苦手なんだけど、何で乗りたいかって可愛いからだよね。 このしろくまランドのアトラクションのデザインがすごく可愛いの。ジェットコースターのシートもしろくま。背もたれがしろくまの上半身になってて、バーはしろくまの腕のデザインだし、しろくまに抱っこされてるみたいな感覚が味わえるのだ! それを味わいたいだけ。だからジェットコースターそのものは怖い。なので。 「隣は絶対絶対百と千歳じゃないと死ぬ」 「逆に女王様から藤くんたち奪おうなんて身の程知らずなことしないからねぇ~?」 というわけで、安心安全の百と千歳に挟まれて、いざ。 「うぅぅぅぅ…」 「蜜、まだ動いてないから」 「ダメなの。既に怖いの…」 「後ろの女王様めっちゃ可愛い怯え方してるんだけどぉ~。声だけで既に可愛いぃ~見たいぃ~」 「いやこれ後ろ見るのムリだろ」 「分かってるけどぉ~」 「蜜、ほら手ぇ握ってな」 「うん…っ」 自分の手に触れた百と千歳の手をぎゅっと握る。 ガクン、となって、ジェットコースターが動き出したのが分かった。ここからはもう俺にとっては地獄のようなので、ひたすら心を無にした。 どんどんどんどん上がっていく。そして、ピタリと動きが止まった。 あ、来る。 そう思うよりも、落ちる方が早かった。 「―――――ッ!!」 声にならない悲鳴と言うのはきっとこういうこと。 ものすごい風圧と はちゃめちゃな動きに頭はめちゃくちゃにかき混ぜられて。 「………………しんだ…」 俺の口からは、もうこれしか出なかった。 「女王様、ほんとに苦手だったんだねぇ~」 ぐったりした俺は、千歳と百の手によってベンチに座らされている。 「千歳、俺 何か飲むもん買ってくるわ」 「あぁ、頼んだ」 「ありがとーもも…」 「声に力がない」 百の手が俺の頬をそっと撫でて離れていく。 俺は千歳の肩に頭を寄せた。 「やすんでるから、茅ヶ崎たち遊んできて」 みんなを俺に付き合わせるのは申し訳ない。 「う~ん…でもぉ」 「まだ時間あるし、もういっこくらい何か乗れるよ?」

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