121 / 240

第121話

思えばほんとに小さい時から一緒にいるんだよなぁ。 高校卒業したらどうなるんだろう…。大人になったら…。それぞれ家庭ができたら…。 全然 想像もできないけど、淋しさが一番に来るあたり、俺はまだ子どもだなぁ。 千歳が缶を捨てて来る、って立ち上がって、百が隣に座る。 俺は黙って百に寄りかかると、肩に頭を乗せた。 百は何も言わずに俺の髪を撫でて、額にキスを落とした。 勝手に淋しくなってたのバレてたかな。 千歳が戻って来て、3人でよく晴れた空を見上げながらぽつぽつと話をする。それは思い出だったり、曖昧な記憶だったり、ありそうな未来の話だったり。 そうこうしているうちに茅ヶ崎たちが戻ってきたので、お土産なんかを買いに、ショップへ。 しろくまの何か買いたいなぁ。可愛いやつ。 シンプルなプラの白いペンケース。しろくまの顔が書いてあって可愛い。 女の子だったらシュシュ可愛いんだけど、縛る髪もないし。 シャーペン…よりはペンケースの方が可愛い。よし、これにしよ。 買い物を済ませてお店の中をふらふらしていると、ふと誰かの影がさした。顔を上げれば衛宮くん。 「…これ、」 彼が差し出したのは、しろくまのぬいぐるみキーホルダー。 「可愛い。どうしたの? これ」 「スタンプラリーの景品。…途中まで、やってただろ」 「あ…」 そう、途中までは集めてたんだ、スタンプ。けど、残りのどこにあるのか分からなくて。 「えっと…」 でも、衛宮くんの意図がイマイチ分からなくて、しろくまを手に持ったまま見上げる。 衛宮くんは何となく決まり悪げに俺を見て、「…だから…、それやるって言ってんだよ」と言った。 「え…、っと…ありがとう…?」 疑問形になってしまう。だって、衛宮くんあんまり俺のこと好きじゃないと思ってたから。 そっか、くれるんだ…。しろくま可愛いから嬉しい。 「………あー…の、さ」 俺が手の中のしろくまを可愛い可愛いと眺めていると、衛宮くんがまた声をかけてきた。 「なに?」 「…っ、その…あの、つ……付き合ってる、のか…?」 「は? 誰が、誰と?」 衛宮くんは何を聞きたいの? 「その…相瀬と、藤棚、たち」 「『たち』?」 「『すげー仲いい』だけじゃ済まない何かがあるっつーか…距離も近いし、だから…」 「最近それ他の人にも聞かれたんだけどさ、付き合ってるとかじゃないからね? 小さい頃からお互い知ってるから距離も近いし、ちょっと親密にもなるし。けどそれだけだから」

ともだちにシェアしよう!