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第121話
思えばほんとに小さい時から一緒にいるんだよなぁ。
高校卒業したらどうなるんだろう…。大人になったら…。それぞれ家庭ができたら…。
全然 想像もできないけど、淋しさが一番に来るあたり、俺はまだ子どもだなぁ。
千歳が缶を捨てて来る、って立ち上がって、百が隣に座る。
俺は黙って百に寄りかかると、肩に頭を乗せた。
百は何も言わずに俺の髪を撫でて、額にキスを落とした。
勝手に淋しくなってたのバレてたかな。
千歳が戻って来て、3人でよく晴れた空を見上げながらぽつぽつと話をする。それは思い出だったり、曖昧な記憶だったり、ありそうな未来の話だったり。
そうこうしているうちに茅ヶ崎たちが戻ってきたので、お土産なんかを買いに、ショップへ。
しろくまの何か買いたいなぁ。可愛いやつ。
シンプルなプラの白いペンケース。しろくまの顔が書いてあって可愛い。
女の子だったらシュシュ可愛いんだけど、縛る髪もないし。
シャーペン…よりはペンケースの方が可愛い。よし、これにしよ。
買い物を済ませてお店の中をふらふらしていると、ふと誰かの影がさした。顔を上げれば衛宮くん。
「…これ、」
彼が差し出したのは、しろくまのぬいぐるみキーホルダー。
「可愛い。どうしたの? これ」
「スタンプラリーの景品。…途中まで、やってただろ」
「あ…」
そう、途中までは集めてたんだ、スタンプ。けど、残りのどこにあるのか分からなくて。
「えっと…」
でも、衛宮くんの意図がイマイチ分からなくて、しろくまを手に持ったまま見上げる。
衛宮くんは何となく決まり悪げに俺を見て、「…だから…、それやるって言ってんだよ」と言った。
「え…、っと…ありがとう…?」
疑問形になってしまう。だって、衛宮くんあんまり俺のこと好きじゃないと思ってたから。
そっか、くれるんだ…。しろくま可愛いから嬉しい。
「………あー…の、さ」
俺が手の中のしろくまを可愛い可愛いと眺めていると、衛宮くんがまた声をかけてきた。
「なに?」
「…っ、その…あの、つ……付き合ってる、のか…?」
「は? 誰が、誰と?」
衛宮くんは何を聞きたいの?
「その…相瀬と、藤棚、たち」
「『たち』?」
「『すげー仲いい』だけじゃ済まない何かがあるっつーか…距離も近いし、だから…」
「最近それ他の人にも聞かれたんだけどさ、付き合ってるとかじゃないからね? 小さい頃からお互い知ってるから距離も近いし、ちょっと親密にもなるし。けどそれだけだから」
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