122 / 240
第122話
「そういうもん、か…?」
「そういうもんだよ」
理解できなくてもいいけど。
「……まぁ、そう言うなら…そうなんだよな」
そうだよ。
衛宮くんはちょっと考えるように黙って、また口を開いた。
「…じゃあ、さ。俺と付き合うのは…、あり?」
「………………は、え?」
俺を見る衛宮くんの顔がほんのり赤く染まっている。
……冗談、じゃ…ない?
予想もしてないびっくりな展開に、俺は言葉が出なかった。
「どっちだよ」
「どっ、ち…って…考えたこと、なかったし」
「じゃあ考えてくれ。今」
俺を見る目が、言葉が、声が。本気だ、って分かったから、俺はますます分からなくなった。
「待ってよ。だって、俺のこと好きじゃなかったじゃん」
「好きじゃないなんて言ったことねーよ」
「でも…、今日だってそんな楽しそうじゃなかったし」
「好きなやつが他の男とベタベタしてて何で楽しくいられるんだよ」
「柳木くん、下心ない人 誘うって言ってた」
「…柳木には言ったことない。あいつは知らないから俺を誘ったんだよ」
「初対面で失礼だったし」
「緊張くらいするだろ」
「あんた呼ばわりした」
「好きなやつの名前そんな簡単には呼べねーの! 相瀬って呼ぶの、緊張するんだよ!」
………冗談、じゃ、ない…?
「好きだ。……付き合ってほしい」
「ちょ、っと待って」
ほんと待って。こんな急展開ほんとに予想もしてなかった。
「……何で?」
「何が?」
「何で俺なの?」
聞くと、衛宮くんは恥ずかしそうに視線を逸らした。
「……入学してからすぐ、相瀬って結構 噂んなってて。先輩とかがよく告白してんの見たし、実際うちのクラスもガチ恋勢多いし…けど俺、男と付き合うって考えたことないって言うか…そういう、感じだったんだけど」
元々ストレートだった、ってこと?
「…笹山先輩と付き合ってんの見たことあって、そん時すげー可愛いな、って無意識に思ってて…そういうの認めたくなくて、何か…ちょっとイライラしてたんだよ。誰かの相瀬だったら全然問題なく…はないけど、でも諦めつくのに先輩と別れるし、柳木とは仲良くなってるし、すげー混乱して…最初は八つ当たりしてた。悪かった」
ええと…元々、可愛いって思ってくれてた、ってことでいいのかな…。
「…今日 一緒に遊んで、どうせ叶うわけねーし、思い出だけあれば…って思ってたけど、ちょっと欲が出た。手ぇ伸ばしたら触れる距離にいて、ただ諦めたくねぇな、って」
ともだちにシェアしよう!