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第123話

俺はただ衛宮くんを見ることしかできなかった。 「気持ち伝えるくらい、してもいいんじゃねーか、って思って…。こんなチャンス、もう二度とない気がしたから、どうしても伝えたかった」 衛宮くんは、まっすぐ俺を見た。その視線からは、確かな熱を感じた。 「返事すぐじゃなくていいから、考えてくれ。俺とのこと」 「………うん」 衛宮くんのことは、まだよく知らない。 けどそれを理由に断るのは、何だか憚られた。それはしちゃいけないと思った。 だから、頷くしか今はできなくて。 嫌いじゃない。でも、好きかって聞かれたら分からない。 衛宮くんが求めてるのは恋愛的な意味だから、友達として、とかじゃないから。 そのうちそれぞれ買い物を終えたみんなが合流して、帰ることに。 「混んでたからあんまり回れなかったけど楽しかったねぇ~」 「今度は今日回れなかったとこ行きたいな」 「結構広いよねぇ~。フードコートも広かったしぃ~」 「あ、おやつ食べ損ねたー」 「そう言えば色々売ってたねぇ~」 クレープとか食べたかったのに。ジェットコースターのあれでクレープ食べるどころじゃなかったからな…。 「そう言えば茅ヶ崎たちはジェットコースターの後どこ行ったの?」 「あのねぇ、水の上をボールに入って歩くっていうのに行ってみたんだけどぉ~息が合わなくてねぇ~」 「柳木はすっ転ぶしな」 「ちょっ、それ言わなくてもいいじゃん! 二人とも荒いんだよ、歩き方」 「えぇ~荒くないよぉ~」 「球体の中を歩くのと、ボールの中に空気入ってるのもあって、なかなか慣れるまでが難しくて…」 「へぇーそうなんだ。ちょっとやってみたいかも…」 「じゃあ、また来た時に行こうねぇ~」 「そうだね」 高校生活まだ2年残ってるし、また来る機会もあるよね。何なら春休みに来てもいいし。来年の夏休みもあるし。 それより先に、俺は衛宮くんのこと考えないと…。 付き合うってつまりそういうこと、だよね。手を繋いだりキスしたり、それ以上も…するんだよね。香月さんが思ってたみたいに。 すぐにどうこうならないとは思うけど、そういうのも考えないといけないんだよね。 すぐに答えなんて出ないし、本人もすぐじゃなくていいとは言ってたけど…それでも時間かけていいのかな…。 正直、香月さんと別れたばっかだし、しばらくいいかなとも思ってたし。ぽんっ、って答えが出るわけじゃない。

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