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第131話

済んだことを思い出しても仕方ない。 とにかく、俺と衛宮くんの、いわゆる友達以上恋人未満的なお付き合い(?)が始まったのだった。 衛宮くんって結構積極的で、遊びだけじゃなくお昼も誘われたり、とにかく一緒に過ごす機会がぐんと増えていった。 俺はただ流されるだけじゃなく、衛宮くんがどんな人かを知らなきゃいけないから、すごく真剣に『付き合う』ってことについて考えた感じがする。 明るいし、たまにツンデレだけどそこも可愛いと思えるし、話も割と…合う。香月さんの時みたいに、理想に合わせるとかそういうのもいらないし。 「相瀬、クレープ食う?」 「あ、どうしよっかなー」 あのしろくまランドの日から、『ふたりだけ』が増えて、衛宮くんの空気にも慣れた。 百や千歳といるのともまた違う感じが何だか新鮮で。 …付き合うのも、いいのかな。なんて、少しずつ思ったり、して。 「んー甘いもの…ジェラートがいいかな」 「そっちか」 「クレープも好きだけどね」 けど、俺が振り回してもいいのかなぁ…、って思うことも…あって。そんなにべったり甘えるのは、やっぱりまだできない。 「抹茶にしよー。衛宮くんは?」 「俺はいい」 「そう?」 あと、まだ何となく距離があるから。 それは仕方ないことなんだけど。 抹茶のジェラートを買って、ちまちま食べながらふたりで歩く。 今日は衛宮くんの買い物に付き合うっていうことで出かけてる。 「あのジャケットよくない?」 「どれ? 黒の?」 「隣のカーキ」 「こっちか」 足を止めて、店頭に出てるジャケットを手に取る衛宮くん。俺はまだジェラート食べてるからあんまり近寄らないで見てる。汚したら大変だし。 「紺もあるんだ。そっちもいいね」 「紺か。紺って持ってなかったかも」 「ちょっと当ててみて」 「こうか?」 「うん」 一歩離れて衛宮くんを見る。 「うん。いいじゃん、似合うよ。カッコいい」 「……それは、ジャケットがか?」 「ふふっ」 微妙な顔するから思わず笑っちゃった。 「ジャケットも、だけど…衛宮くんも?」 「…っ、ほんと小悪魔だな」 ほんのり染まる頬。そういう反応も、胸をくすぐる。 「小悪魔な俺は嫌い…?」 「っ、相瀬ずるいぞ」 「ごめぇん」 茅ヶ崎みたいな謝り方になっちゃった。 衛宮くんも「茅ヶ崎かよ」って笑った。 「他のとこも見ようか」 「そうだな」 ちゃっちゃとジェラートを食べて、ゴミを捨てる。空いた手が、衛宮くんのと小さく触れた。

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