132 / 240

第132話

相手の気持ちを知ってて、いつまでも答えを出さないのはいけない。 けど、決定打がほしいと思う俺は、きっと甘えているんだろう。 それは多分、衛宮くんに正直に話した方がいいこと…なんだよね。 いくつかショップを回って、衛宮くんは一番最初のとこで見た紺のジャケットを買った。 俺もあれが一番似合ってると思ったから、そう伝えた。 「ありがとな、付き合ってくれて」 「ううん。見るのも楽しかったよ」 買い物の後、フードコートで休憩する。 休日のモールはやっぱり混んでいて、ざわざわとしていた。 俺は何となく衛宮くんを見る。話を切り出すのは、今でもいいのかな。何が正解かなんて分からないけど。 待ってくれてるなら、きっと早い方がいい。 「…あのね、」 俺の声に、衛宮くんがこっちを見る。 「一緒にいるの、結構楽しい。付き合うのもいいのかな、って思ったりもするし。けど、まだやっぱり距離がある感じもするし…俺もべったり甘えるとか、できないし」 「…うん」 「早く、答え出さなきゃ、って思ってる。でも、これは甘えかも知れないけど、決定打がほしくて」 「…決定打?」 「この人だよ、っていう、決定打。確信、みたいな」 衛宮くんは、真剣な目をして俺を見ていた。 だから俺も、逸らさないで視線を合わせる。 「…それ、ないと付き合えない?」 「分かんない…。俺ね、今まで失敗してるから、自信がないの。でもこういうのは、ちゃんと自分で決めないとだし」 「何て言うか…真剣に考えてくれるのは嬉しい。けど、もうちょっと気楽でいいんじゃねぇの? 別に一生を過ごしましょうってんじゃねーし」 「…茅ヶ崎みたいなこと言ってる」 「うわ、マジか」 俺が考えすぎてるのか。 「多分付き合ってもそう変わらねぇよ。こうやって一緒に出かけたり。今だって俺は相瀬のこと好きだし。相瀬だって、前向きに考えてくれてるみたいだし」 「…うん」 「付き合ってよ。友達じゃなくて、彼氏として」 テーブルの上で、手が触れた。 衛宮くんが俺の手を握る。嫌じゃない。 「でも俺まだ…気持ちが同じとこまで追い付いてない」 「知ってる」 「…まだキスとかそういうの、考えられない」 「それは…じゃあまだしない」 「そんなんでいいの?」 「いいっつーか…それ聞いても、好きだし」 「対等、じゃ、ないじゃん?」 「色々考えてくれるのは嬉しいんだけどさ、相瀬を好きなやつが周りにいる状態で、ちょっと安心もしたいんだよね」

ともだちにシェアしよう!