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第132話
相手の気持ちを知ってて、いつまでも答えを出さないのはいけない。
けど、決定打がほしいと思う俺は、きっと甘えているんだろう。
それは多分、衛宮くんに正直に話した方がいいこと…なんだよね。
いくつかショップを回って、衛宮くんは一番最初のとこで見た紺のジャケットを買った。
俺もあれが一番似合ってると思ったから、そう伝えた。
「ありがとな、付き合ってくれて」
「ううん。見るのも楽しかったよ」
買い物の後、フードコートで休憩する。
休日のモールはやっぱり混んでいて、ざわざわとしていた。
俺は何となく衛宮くんを見る。話を切り出すのは、今でもいいのかな。何が正解かなんて分からないけど。
待ってくれてるなら、きっと早い方がいい。
「…あのね、」
俺の声に、衛宮くんがこっちを見る。
「一緒にいるの、結構楽しい。付き合うのもいいのかな、って思ったりもするし。けど、まだやっぱり距離がある感じもするし…俺もべったり甘えるとか、できないし」
「…うん」
「早く、答え出さなきゃ、って思ってる。でも、これは甘えかも知れないけど、決定打がほしくて」
「…決定打?」
「この人だよ、っていう、決定打。確信、みたいな」
衛宮くんは、真剣な目をして俺を見ていた。
だから俺も、逸らさないで視線を合わせる。
「…それ、ないと付き合えない?」
「分かんない…。俺ね、今まで失敗してるから、自信がないの。でもこういうのは、ちゃんと自分で決めないとだし」
「何て言うか…真剣に考えてくれるのは嬉しい。けど、もうちょっと気楽でいいんじゃねぇの? 別に一生を過ごしましょうってんじゃねーし」
「…茅ヶ崎みたいなこと言ってる」
「うわ、マジか」
俺が考えすぎてるのか。
「多分付き合ってもそう変わらねぇよ。こうやって一緒に出かけたり。今だって俺は相瀬のこと好きだし。相瀬だって、前向きに考えてくれてるみたいだし」
「…うん」
「付き合ってよ。友達じゃなくて、彼氏として」
テーブルの上で、手が触れた。
衛宮くんが俺の手を握る。嫌じゃない。
「でも俺まだ…気持ちが同じとこまで追い付いてない」
「知ってる」
「…まだキスとかそういうの、考えられない」
「それは…じゃあまだしない」
「そんなんでいいの?」
「いいっつーか…それ聞いても、好きだし」
「対等、じゃ、ないじゃん?」
「色々考えてくれるのは嬉しいんだけどさ、相瀬を好きなやつが周りにいる状態で、ちょっと安心もしたいんだよね」
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