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第134話

彼氏が出来たからといって、何かが劇的に変わるわけじゃない。 強いていうなら、百や千歳と過ごす時間が減るくらい? 友達じゃなくて彼氏なら、そうするべきかな、って。衛宮くんのことまだよく知らないし。 それに、百や千歳のそばにいると、どうしても甘えたくなってしまうから。 そんなわけで、お昼はなるべく毎日一緒に食べてる。好きなものとか嫌いなものとか、ほんとにそこから知るレベルだから。 衛宮くんは自宅通学で俺は寮なので、登下校一緒はちょっと難しい。帰りは途中まで一緒だけど、寮から学校なんてほんとにすぐそこだし、途中までなんてたかが知れてる。 そう言えば、香月さんと付き合ってる時、ほんとは寮まで送ってほしいなー、って思ってたんだっけ。 …今日 言ってみようかな。 というわけで、いつものように校門を出たところで足を止めて衛宮くんを見上げた。 表情とか、仕草とか、ちょっと可愛い俺を作って。 いつも可愛いけどね! 「今日は寮まで送ってほしいなぁ」 あ、言葉の選択を間違えた。 寮まで一緒にいたいなぁ。の方が良かったな。 「まだ一緒にいたい。…だめ?」 ダメ押し。 こて、と軽く首を傾げてみせる俺を見る衛宮くんの目は………………え、マジだ。 ちょっと怖い…。 「………何か言ってよ」 無言で真顔で見られるって怖いんですけど。 「ダメならダメでいいし、電車の時間とかあるもんね」 怖さがあるから、可愛いモード解除。 いつも可愛いけどね! 「それじゃ、また明日ね」 「相瀬」 帰ろう、と思って手を振って背中を向けると、腕を掴まれて呼び止められた。 「なに?」 振り返ると衛宮くんの顔が思いの外近くにあって、思わず下を向いてしまった。 キスをされそうになる場面は、これまでも何度かあった。 でも全部俺が気づかない振りで躱してしまっている。 申し訳ないんだけど、まだそこまでの気持ちじゃなくて。付き合う時に、衛宮くんには既にキスしたいみたいなところもあったら、すごく我慢させてしまっているのは分かってる。 これは俺の問題。 押し切られるようにして始まったこの関係は、今までのいわゆる『お付き合い』とは少し違う。 いや、今までだってきっと天秤に掛けたら相手の想いの方が重かったのかも知れないけど(特に香月さん)、今はそれがすごく顕著だ。 自惚れじゃなくて。 「…相瀬って甘える割にガード固いよな」 さすがに数週間も躱されれば分かるか…。

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