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第135話
あ、今キスしたいんだろうな。って分かってて気づかない振りで躱していくのは、気分の良いものではない。
じゃあキスくらいさせてやれよ、ってなるかも知れないけど…それはまだちょっと…ってなっちゃうんだよねぇ…。
香月さんと付き合ってる時、もちろん好きになってから付き合ったのもあると思うけど、自然とキスしてもいいかなって気持ちになったから。そういうのを待ちたい。
でも衛宮くんはそうじゃない。
その気持ちのズレが起きている。
たまに。ほんとにたまにだけど、衛宮くんは俺のそんなところに不機嫌になることがある。
今みたいに。
不機嫌になりたくもなるのは分かる。
好きで、めちゃくちゃキスしたい相手に、ずっとお預け食らってるんだから。
分かるけど…。
「身持ちがいいって言ってくれる? 言ったじゃん。俺 安くないよ、って」
「付き合ってても高額なのかよ」
「それは…ごめんとは思ってる」
「いつんなったら良いわけ? 別にヤりたいとか言ってるわけじゃねーんだけど」
「…分かってるよ。でもまだ数週間だし…」
「期間の問題? なら来週になったらいいのか?」
…めっちゃぐいぐいくるじゃん。
「…どうしても唇じゃなきゃ、だめ?」
「他にどこがあるんだよ」
「おでことかあるじゃん」
「……好きなやつに触れられるならどこでもいいっちゃいいけど…唇すげーエロい自覚あんの?」
「ないよ!! 茅ヶ崎みたいなこと言いやがって!」
「言われてんのかよ!!」
「香月さんにも言われましたぁ! あともう一人にも!」
「はぁ!?」
「でも自覚なんかないんだからねっ!」
掴まれた腕を振って、衛宮くんの手から逃れる。
「ないなら自覚しろよ」
「何で命令されなきゃいけないの?」
「そそられるからだよ」
真顔で返された。怖。
「自制してよ」
「しててこれだわ」
開き直りやがった。
「とにかく、キスはまだ、だめ。来週なら良いとかも言えない」
「ったく…。じゃあハグならいいか?」
「……いいけど」
何その、俺が悪いみたいな言い方。何でキスひとつでそんな態度されなきゃいけないわけ?
それしか考えてないの?
ちょっとイライラが込み上げる。それを深く息を吸うことで何とか抑えて、ハグをする。
「相瀬」
「なに」
「……耳にキスするのは?」
「………………変なことしないなら、いい」
「変なことって何だよ」
「キス以外の、舐めたりとか、それはダメ」
「……チッ」
あ、今小さく舌打ちしたぞ。
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