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第137話

「…今 一緒にいたのって、E組の衛宮だよね…?」 「あー…うん」 その人は、じっと俺を見てくる。嫌だな、と思ったから、ドアを開けた格好のまま待機。逃げられるように。 「つ、付き合ってるの…?」 「それって、答える必要なくない? 何でそんなこと聞くの?」 「っお、俺っ」 腕を広げて、ジリジリとこっちへ寄ってくる。 来るな。あっちへ行け。ハウスだ。 「俺っ、相瀬くんのことがっすっ好きっ、好きっで! つ、つ、付き合いたい!」 「ごめん」 「何でっ」 「タイプじゃない」 「どっ、どんなのがタイプっ?」 「うーん…そうだね。百とか千歳レベルになったら考えてあげる」 「ふっ藤棚くんや須賀谷くんレベルっ? わ、分かった! なるよっ! 待ってて!!」 「はぁ? 自分が百と千歳と並べると思ってんの?」 「……え?」 動きが止まったところを、するりとすり抜けた。 「あのふたりは俺の中では別格なの。他の男と違うの。並べると思わないで。厚かましい」 「あ…相瀬くん…っ」 伸ばされた手を躱して、エントランスの階段を上がった。 「相瀬くんっ、待って!」 「待たない」 振り返らずに2階へ上がって、3階への階段へと足をかける。 これ、このまま部屋まで来られたらやだなぁ。 「すっ、好きなんです!!」 「悪いけど諦めて」 「そんな…っ!ならせめてっ、そのおみ足で俺のちんちん踏んでくださいっ」 「ド変態!」 何で急にそうなった!? 「そんな嫌そうに罵られたら…ぁっ……興奮します…っ!」 「きっっっもちわるっ!!」 「あ、蜜じゃん。おかえり」 階段から蹴り落とそうかと半ば本気で思っていると、上から声が降ってきた。見上げれば、百と千歳が並んで下りてくるところだった。 俺はほっと息を吐く。 「ただいまぁ。ふたりはどこ行くの?」 「売店に菓子買いにな。で、後ろのは?」 「しつこくて困ってるの」 「へぇ…?」 百の唇が、冷たい笑みを浮かべて弧を描く。 千歳の目が、すぅっと冷たく細められた。 「あっ…おっ、俺っ、ぼ、僕っ、あっ、帰らなきゃ…っ」 目を忙しなくキョドキョドさせたその人は、足をもつれさせながら階段を駆け下りて行く。エントランスで派手に転んだけど、立ち上がるとそのまま転がるようにドアから飛び出していった。 それを見て、俺はまた息を吐いた。 「助かったよー。ありがと」 「股間踏まずに済んでよかったな」 「ほんとだよ」 俺にそんな趣味ないし。ほんと迷惑なんだから。

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