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第139話

俺、無自覚なのって個人的に好きじゃないの。時に無神経にもなるじゃん。 「何人誑かしたら気が済むんだよ」 「誑かしてなんかないし。失礼じゃない?」 「気を持たせて遊んでそうじゃん」 「何そのイメージ。最低」 いくら何でも、それって付き合ってる相手に言う言葉じゃなくない? 「…俺と付き合ってんだよな?」 「そうだけど?」 ツンケンした声が出ちゃうのは仕方なくない? 「周りに男の影 多すぎんだよ…。藤棚も須賀谷もだし、茅ヶ崎とか、他にもまだチラチラ」 「百と千歳はそもそもそういう関係じゃないし、茅ヶ崎はまぁ、仲良くしてる程度だよ」 「分かってるけど何かさぁ…」 そもそも男子校なんだから男の影が多いのは仕方なくない? 360°どこ見ても男しかいないよ。 「俺だけすげーヤキモキさせられてる」 「それは…」 そこも自覚があるから何も言えない。 「俺の何が不満?」 「不満とかじゃないよ。まだよく知らないだけ」 「相瀬は知ってからじゃねーと恋愛できねぇの?」 「…恋愛、しようと思うから知りたいんじゃん」 「しようと思うって、今はしてねぇのかよ」 「ねぇ、いちいち言葉尻拾わないでよ。お互いのペースが違うのは仕方ないじゃん。気持ちだって追いつけるように色々知ろうとしてるのに、急かされてばっかり」 衛宮くんがムスッとして黙った。 早く好きになれ、って急かされたってなれるものじゃない。むしろ好きになるように育てさせて欲しいのに。 それが俺のワガママなのは分かってるけど、もうちょっと余裕持って待ってほしい。 まぁそりゃね? こんな可愛い俺ですから? 横からかっ拐われたらどうしようとか? そんな不安もあるでしょうけど、そんな不義理はしないよ。 もうちょっと信じてくれても良いんじゃないの? 明確な言葉がないのに信じられないって言われたらそれまでだけど…でも、今は好きになるためにある時間だと俺は思ってるよ。 ――っていうのを本人に言えばいいのかな? ため息を呑み込んで、俺は口を開く。 「とりあえずさ、お互いのこともうちょっと知るためにまた一緒に出掛けてみる?」 「…ふたりで出かけるのなんか付き合ってからもその前も何度もしただろ」 「……」 俺の善意を踏みにじりやがった。 「じゃあいいよ、他の人と行く」 「っ!? そうじゃねーだろ!」 「何度も一緒に出掛けたからもう俺とは出掛けなくないんでしょ」 「そんなこと一言も言ってねーし! 俺はただ、今さらそれかよ、って思っただけで!」 「今さらとか思われるなら余計もういいよ」 もう!

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