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第142話
ケンカ、かぁ。
香月さんと付き合ってる時は、ケンカめんどくさいって思っちゃったんだよな。けど今は、そういうの考えずにケンカっぽいことしてる。
だって俺の気持ちを散々急かすんだもん。
「大体 柳木は相瀬に甘いんだよ」
「はぁ? そんなの当たり前」
「曇りなき眼で言うな」
「衛宮さぁ、たとえ彼氏だとしても女王様にはファンもガチ恋勢も多いんだから、もうちょっと考えた方がいいぞ」
「はぁ?」
「付き合ってるとは言え、女王様まだ衛宮にしっかり甘えてる感じしないし、つけ入る隙があると思われてるよ」
え。
俺も衛宮くんも、そんな気持ちが顔に出てたと思う。自分の顔は見れないけど衛宮くんの顔は見れるから。衛宮くんは完全に出てた。
「まったく…。俺を誰だと思ってんの? 女王様を愛で隊のリーダーだよ?」
「あれ本気だったのかよ!?」
…ほんとに設立したんだ。知らなかった…。
え、もしかして百や千歳は知ってたのかな…?
「笹山先輩といる時とはまた違う雰囲気だけど、女王様にはまだ遠慮がある、って狙ってる人多いから。女王様も、衛宮と付き合い始めてからも告白とかありませんでしたか? あ、答えなくても大丈夫ですよ。衛宮に危機感 持たせたいだけなんで」
「柳木くん…すごいね」
「恐縮です」
柳木くんが優雅に一礼した。
委員長みたい。
「……相瀬モテすぎじゃね?」
「衛宮、こちらにおわすお方をどなたと心得る」
「水戸黄門かよ。じいちゃんばあちゃんしか分からねぇぞ、そのネタ」
「俺 小さい頃お祖父ちゃんと一緒にそれ観てたよ」
「あ、俺もです!」
時代劇専門チャンネルとかでやってたよね。今もやってるのかな?
「とにかく、ライバルは多いんだって。女王様だけじゃなくて衛宮も注目されてんの。そこんとこちゃんと知ってた方がいいよ」
「マジかよ…」
衛宮くんの顔に『めんどくさい』って書いてある。
そりゃ、付き合う相手のこと色々言われたくないよね。俺だってやだもん。自分のことだけど。
そんなめんどくさいのが背後にいる俺でいいんだろうか。
「ついでに言うけど、めんどくさいって思ってんなら今すぐ振ってもらいなよ。そんなこと思ってたら、衛宮に女王様の相手は務まらないよ」
「おい、柳木」
「柳木くん…すごいね」
「恐縮です」
柳木くんはまた優雅に一礼。
衛宮くんは面白くなさそうな顔してた。
まぁ実際 面白くないよね。いちいち人の付き合いに口出してくんな、って思うよね。
…香月さんは知ってたのかな。そういうめんどくさいの。
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