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第147話
「ごめんね、柳木くん」
「えっ、そんな、俺に謝ることじゃ…」
「うん…でもやっぱ俺が衛宮くんを傷つけてることに変わりはないから。曖昧に頷かなきゃよかったんだよ。まだ気持ちが分からないから付き合えない、って言えばよかった」
「でも押し切られたのは事実でしょぉ~? 迷ってるのが分かったから強気に出たのはむこうじゃぁん~?」
「…安心したい、とは言われた。でもこれじゃ安心も何もなくない? 悪いのは全部俺かよ、って気持ちになるよね」
実際そういう気持ちになってると思う。
「楽しむだけの余裕がないんだろうねぇ~」
「隙がある、って思われてるって言ったの俺だから…焚き付けたのは俺です」
「でもぉ~、それも衛宮くんを思ってでしょぉ~?」
「それが伝わらないと意味がないよ」
柳木くんはちょっと淋しそうに笑った。
「変われたら、いいんだとは思う。ファン?を全部把握できてたら、俺が選んだんだから何もしないで、とか言えたんだと思う。けど、それはもう自分じゃない」
「分かるよぉ~」
「だからって傷つけたいわけじゃないんだけど…多分、好きってハッキリ言えたら、衛宮くんも不安じゃなくなるんだよね」
「でも、それこそ嘘をつくわけにはいかないことだもんねぇ~」
「うん…」
どうしたら好きって言えるんだろう。
俺はまだ、一緒にいて楽しいくらいの気持ちでしかなくて、これから衛宮くんを知っていこうって思ってたけど。
「…俺、人と付き合うの向いてないかも知れない。すごいワガママだし」
「女王様しっかりしてぇ~」
「自分だけにワガママ言ってほしい、って男はいますよ!」
…百と千歳に甘えたい。甘やかしてほしい。
でもそれをしてしまったら、きっと衛宮くんをもっと傷つける。それは多分、プライドも。
だからしちゃダメ。
でも、愚痴るくらいはいいかなぁ…。
「…女王様はさぁ~、衛宮くんの知らないとこで色々遠慮してるでしょぉ~?」
「え、」
「藤くんと須賀谷くんに甘えたいの我慢してるし、ほんとはもっとふたりといたいけど、それも我慢して衛宮くんといる時間増やしてるでしょぉ~? 衛宮くんが嫌な気持ちにならないように、ちゃんと考えてるんだよぉ~」
だからね、と茅ヶ崎は続けた。
「たまにはさぁ、甘えてもいいと思うよぉ~」
「…それはできないよ。ただでさえ今すごく曖昧な気持ちで一緒にいて、なのに他の人に甘えるのは…」
「女王様…」
柳木くんにも心配かけてしまっている。
このままじゃダメだ。
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