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第152話

「だけど相手の気持ちに真剣に向き合ったのは嘘じゃないだろ」 「千歳…」 「こんなにやってるのに、って主張する必要はないけど、自分だけが悪いと思う必要もない」 確かに、今までよりずっと悩んだ。軽い告白じゃなかったし、自分も失敗したくなかったから。けど、その時間ってちゃんと衛宮くんのためだったかな。自分のため…? 分かんない。 考えるの疲れちゃった…。 百の腕の中で目を閉じる。慣れた温度に安心して、このままずっといたくなる。ダメなんだけど。 千歳に握ってもらってる手が、その強さが頼もしいと思う。そばで手を握っていてくれたらいいのに。それもダメなんだけど。 結局俺はどうしたいんだろう。 ふたりでいる時間を増やして、衛宮くんのことを知ろうと思ってきた。 それは俺の中では『好きになるための努力』だと思ってるんだけど、それを本人には言えないし。恩着せがましいもん。 衛宮くんが求めてるのは、ハッキリ分かりやすい好意なんだろうな。 俺から衛宮くんに触れることはない。ハッキリ好きとも言えない。それじゃイライラするのも分かる…気がする。 でもさぁ、でも、仕方ないじゃん。 開き直りとか言われるんだろうけど、でも仕方ないじゃん。 そこまで気持ちが育ってないんだって。 育てようと思ってるのに、めんどくさいだのファンを把握しとけだの変わろうとは思わないのかだの言われたらさぁ!! こっちだって、何それ、ってなるじゃんね!! 茅ヶ崎の言う通り、ハッキリ好きって言えないことに負い目みたいなのは感じてるよ。 だから俺だって、衛宮くんに合わせてるとこだってあるのに。 求められるばっかなんて、無理なんだって!! こんな気持ちになるなら、冷静になれないなら、しばらく会わない方がいいのかも。 付き合いはじめてまだ1ヶ月とかだけど、ちょっと離れて相手を見るのも必要なのかも。 まだ完全に自分のこと好きじゃない相手と付き合ってたら不安になるのは分かる。衛宮くんを不安にさせてるのは俺なんだって分かってる。 「……まだ、友達でいればよかった」 ぽつりとこぼれてしまったのは、俺の本心。 一緒にいるのは楽しかったのに、今はそう思えなくなってる。 嫌いじゃない。だけど求められるのが今はしんどい。俺だって、何もしてないわけじゃないのに。 「それ聞いたら発狂しそうだよねぇ~」 茅ヶ崎がちょっと苦笑いの表情で言った。

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