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Cowardly yellow

「強引に『女王様の彼氏』って称号を手に入れておいて、早く心も寄越せ、なんてのは随分傲慢なんじゃなぁい?」 友達が憧れの人と付き合うことになった、って聞いたのは、ほんとに寝耳に水な出来事だった。 俺、柳木 結羽日の友人である衛宮は、俺や周りのやつらが女王様(呼び慣れてしまった)のことを「ほんと可愛い! 天使みたい!」って密かに興奮して褒めそやすのを、なかば呆れたような目で見ているタイプのやつだった。 だから女王様には興味とか関心とかないんだなー、って勝手に思っていて、それならと遊びに行くのにも誘って。 なんだけど、遊びに行ったその日に実は告白してたなんてことを後から知らされて、思わず「裏切り者ォ!!」って叫んだのは記憶に新しい。 俺は女王様にガチ恋勢ではないけど、天使のような最強の可愛さの中にチラチラ見え隠れするちょっと気の強そうな感じを愛でていたい。と、思っている。決してストーカー的なアレではない。マジで。 …それは置いといて。 女王様は衛宮と付き合うようになってから、意識して藤棚くんたちと過ごすのを減らしているように見えた。 前はよく一緒にいたし、可愛く甘えたりする姿を何度も何度も見た。でも付き合い始めてからは衛宮のそばにいるようになって、藤棚くんたちといることに衛宮に対して遠慮と言うか…そういうのがあるんだろうなぁ、って。 付き合うことになったとは言え、衛宮が押し切ったのは本人から聞いてたし、女王様は好きになるために衛宮をよく知ろうとしている段階に見えて、まだ油断できる状況ではないんだな、って俺は理解していた。 でも衛宮はちょっと違う感じがした。 不安もあるだろうけど、『彼氏』であることに胡座をかいてるように見えて、まだ油断するなよ!って発破をかけようと、思っていた。 けど事態はちょっと違う方向へ動いてしまい、衛宮を焚き付けるどころか不安を煽って不貞腐れさせ、2人の仲がギクシャクしてしまった。 女王様が、「じゃあもう別れようよ」みたいなことを言う場面もあって、俺はすごくヒヤヒヤしたんだけど…。 別れさせたいわけじゃない。 正直なところ、俺としては、衛宮でいいのかな?って思うこともあるけど…。いいかどうかは、2人で決めることだから。 女王様が茅ヶ崎と教室に戻っていくのを見送った後、俺も戻ろうとため息をつきながら足を進めた時だった。 「うわぁ!!」 物陰にしゃがみこんだ衛宮を発見したのは。 戻った振りして聞いてたの? 「座敷わらしかよ! びっくりしたなぁもうっ!」

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