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第154話
情けない声を上げた恥ずかしさもあり、ちょっと強気に出てしまったけど…。衛宮は何も言わなかった。何だか少し、落ち込んでいるように見えた。
「…衛宮、遅れるよ。教室行こう」
「…あぁ」
隠れて聞いてたなら、女王様が自分とのことをちゃんと考えようとしてくれてたのは分かったはず。けどそれと同時に、迷いも分かったはず。
だから落ち込んでいるように見えるのかな…?
「…ごめんね。俺ちょっと煽り過ぎた」
俺の言葉に、衛宮からの返事はなかった。
授業が終わって、衛宮は今日も女王様と帰るのかな…?って思っていたら。
「柳木くぅ~ん、衛宮くんもぉ~、帰るよぉ~」
元気に茅ヶ崎がやって来た。
「は? 何でお前なんかと」
「『お前』は禁句だよぉ~、衛宮くん~。学習しようねぇ~、ほら行くよぉ~」
「おい、腕つかむな。いだだだだだ!! 腕ぇ!! 痛い痛い!! やめろ!! 握り潰されるぅぅう!!」
「うるさいなぁ~。ちょっとは静かにできないのぉ~? 柳木くんもおいでぇ~」
「はぁ~い…」
衛宮の痛がりようはただ事ではない。
それを悟った俺は逆らわずカバンを肩にかけて茅ヶ崎を追いかけた。
連れてこられたのは、駅前のファストフード店。
適度にざわざわしている店内は、同じような学校帰りの学生や、どこか暇そうに窓の外を眺めるスーツの社会人なんかで、ほどほどに混み合っていた。
そして俺たちの正面に腰を下ろした茅ヶ崎がにこやかに放ったのがあのセリフである。
「強引に『女王様の彼氏』って称号を手に入れておいて、早く心も寄越せ、なんてのは随分傲慢なんじゃなぁい?」
これだ。
衛宮は憮然としたし、俺はとりあえず口を噤んだ。
茅ヶ崎は俺たちより物理的な距離の近いところで女王様を見てきてるから、思うところもたくさんあるんだと思う。
「…お前に何が分かるんだよ」
「『お前』はダメだ、って言ってるのに学習しない頭だねぇ~。分かんないよぉ、俺 衛宮くんじゃないもん~」
茅ヶ崎はけらけらと笑った。
「だったら首突っ込んでくるんじゃねぇよ。目障りなんだよ」
衛宮がいつになく攻撃的で、俺はハラハラしてしまう。
だけど茅ヶ崎はまた笑った。
「首突っ込ませないようにすればいいだけの話なんじゃないのぉ~? それもできないのに随分大きな口叩くじゃぁん~」
違った。煽った。
「うるせぇんだよ、関係ねぇだろ」
衛宮のイライラが、隣に座る俺にハッキリと伝わってきた。
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