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第159話
電話に出た須賀谷くんは、俺の身を案じながらもしっかり話を聞いてくれた。
『柳木はしばらく俺たちと無関係な振りをして過ごしてた方がいいな』
「でも、俺が…」
『声が随分苦しそうだ。衛宮に殴られたりしたんじゃないだろうな?』
「っそ、あ、う」
咄嗟の受け答えが弱い俺。
『柳木にもそう出るとは…。迂闊だった』
「いや、これは別に誰が悪いとかじゃなくて、俺…衛宮のこと、ちゃんと知らなくて」
『中学が一緒だったんだよな』
「あ、はい」
『当時 付き合ってた彼女から相談されたりとかは…』
「俺 女の子ちょっと苦手なんです…。それに、中学の時は衛宮とそこまで親しくしてなかったんです。同じクラスだった時もあったけど、そんなにアレだったし…。今は同中だから、ってことで一緒に動いてた感じだし…」
行き帰りが同じだから自然とそうなった感じだし、何ならクラスで一番仲が良いのは衛宮じゃなかったりするし。
「…あんなやつって知ってたら絶対誘わなかったのに…」
言っても仕方ない。仕方ないけど。
『柳木は何も悪くない』
須賀谷くんはきっぱり言い切った。
『柳木と会ったことで蜜は楽しそうだし、百も俺も、柳木といるのは楽しいよ』
「須賀谷くん…っ」
あ、泣きそう。
『だから絶対無理はしないでくれ。衛宮とは距離を置いて、俺たちとも何の接触もないように振る舞えるか?』
「それは…構わない、ですけど」
『衛宮が柳木の家まで来ることはあるか?』
「ないです。俺たち、駅からは逆方向だし、衛宮も俺もお互いの家知らないので。家に遊びに行く仲でもないし」
『そしたら、家に着いたら連絡もらえるか? これからしばらくの間』
「いいですけど…?」
『柳木の無事の確認と、状況の共有はしときたいからな』
「え、あ、はい。あの、え、ありがとうございます」
俺のことまで心配してくれてる…。
『柳木』
「はい」
須賀谷くんが俺を呼ぶ。
衛宮とは違う、柔らかな声で。
『蜜のことは俺たちに任せておけ。柳木はしばらく自分の身を守ることに注意しておいた方がいい。何かあったら、誰でもいいからすぐに連絡してくれ』
「…はい」
『握力ゴリラを召喚するのが一番手っ取り早いかも知れないけどな』
「茅ヶ崎ですね」
握力ゴリラには笑う。けどほんとに握力ゴリラなんだろうなぁ…。
「…あの、女王様はもう知ってるんですか?」
『衛宮のことはまだ伝えてない。けど衛宮はどうも気が短そうだから、明日にでも自分から蜜に、俺たちが身辺洗い出したことは話しそうではあるな』
話したって…女王様が衛宮を信じるわけないのにな…。
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