「…距離置きたい、って言ったら怒るかなぁ」 ぽつ、と呟くと、みんながこっちを見た。 「『怒る』と思うんだな、蜜は」 千歳が言う。 「だってさぁ、怒るよ。怒ったもん、今日」 「へぇ…」 あれ？ 百の声がちょっと低くなった…？ 「どんな風に？」 あ、違う。いつもと一緒だ。 「何かね、えーっと…あ、そうそう。俺がファンをちゃんと把握してないとか言われて、俺はそんな必要なかったし、そうしてほしいのは衛宮くんでしょ、って言ったら怒ったし。俺が自分で自分と付き合うのめんどくさいって分かった、って言ったら、分かったんなら態度とか性格とか変えるつもりないのかよ、って怒ったし。何か…うん、そんな感じ。俺も気が長い方じゃないけど、衛宮くんも導火線短いなー、って思ったんだよね」 でもなぁ…。 「それはさ、俺がまだちゃんと『好き』って言えてないからってのもあるんだと思う」 「言えてないのは、ちゃんと好きじゃないからだな」 委員長…。 そうなんだけどね。 「好きになる可能性はあるのか？」 「可能性…って言われてもなぁ」 正直ほんとに分からない。 「香月さんの時と違って、ケンカできたのはいいこと？なのかも知れないけど…。けどなぁ…怒った時って、その人の本音が出るって言うじゃん？ 性格変えろって本音なのかなーとか思ったり」 「性格はそう変わらないからな」 「だよねー」 ってか変えるつもりないし。 嫌なら別れようって言えばまた怒るしさぁ。どうすればいいの？ 俺。 「求めるばっかり、って言われたけど…」 「でも相手もファンを把握しろと言ったり性格変えるつもりないのかと言ったり、求めてないか？」 「それ言ったら不貞腐れたみたいになったもん」 「…ワガママだな」 「委員長、ワガママは俺の専売特許」 「だとしてもワガママだな」 何かもー打つ手なしって感じ？ 諦めちゃダメか。 「それにさぁ」 あーダメだと思っていながらも愚痴がこぼれてしまうよ。 「何て言うかさぁ、態度とか言葉の端々に何か…うまく言えないけど嫌な感じを覚える時があるんだよね」 「嫌な感じ？」 「うーん…何て言うか……うーん…下に見られてるって言うか…」 委員長がちょっとだけ目を見張った。 「あと何か…力で捩じ伏せようとするところもあるのかな、ってちょっと不安になったり…」 衛宮くんに掴まれたところに、俺はそっと触れた。もう痛みはないけど。あの時は本当に痛かった。