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第163話

「それは距離を置いた方がいいかも知れないな。下に見たり力で捩じ伏せるとなると、デートDVも疑った方がいい」 委員長が真面目な顔をして言うと、聞いてたみんなが頷いた。 「…距離、置けるかな」 「不安ならついていくぞ」 「そうそう、俺ら一緒に行くし」 「何なら万全の体制で護衛してくし」 みんな優しいなぁ。 「ありがとね、みんな」 ちょっとホッとした。 色々ぐちゃぐちゃ考えすぎて、どうすればいいか分かんなくなってたけど。 1回離れてみたい。1ヶ月一緒にいて、でも気持ちが育たないっていうのは、多分そういうことなんだと思う。 今日のことで、ちょっと不安も出てきたし。このまま付き合っててもお互いのためにはならないよ。 問題は、どう伝えるか、だね。 別れるのは拒否されたしなぁ。けど、このままでいいって衛宮くんは思ってるのかな? ちゃんと話をしないといけないとは…思ってる、んだ、けど。 …顔、合わせたくない。 ワガママな俺。 あーぁ…本当にまだ友達でいれば良かった…。 本心がこれなんだから、付き合って行かれるわけがない。 でもなぁ…これ言ったら絶対怒るよ…。それもめんどくさい。 この際 怒らせてもいっか。 最悪これで終わりになっても……後悔、しない、かな…。 うん。終わりになる可能性もあるからちゃんと考えよう。 「もうちょっとよく考えてみるね」 「俺たちは女王様の御心のままに動くからな」 「何それ、めちゃくちゃ頼もしいね」 思わず笑ってしまった。 こんな風にクラスのみんなに甘やかされてたら、別に衛宮くんに甘やかされなくてもいいな。結局好きって言えないから甘えられないわけだし。 それに、今日の感じだと、甘やかすとかしなさそう…。甘やかされたいならこれしろあれしろとか言われそう…。勝手なイメージで悪いんだけど。 「しばらく彼氏とかいいから、ほんとに男を見る目を養いたいな…」 「女王様、両脇にいい男がいるぞ」 「知ってる。小さい頃からよーく知ってるよ」 だから千歳と百を選ぶ人は、男を見る目がある人だよ。 思わずふたりを見上げると、ふたりは優しく笑って両側から俺の頬にそっとキスをした。 その時 俺は遅ればせながら悟った。 ふたりにとって、衛宮くんは俺の彼氏じゃないことを。 彼氏には遠慮をするふたりは、俺に彼氏がいる時は絶対にキスをしない。百と千歳から触れることはない。 でも、そうだ…教室に戻った時、ふたりは俺を抱き締めたし、頬と髪に触れた。髪と指にキスをして、今、頬にもキスした。 それはつまり…そういうこと。

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