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第165話

「…百はさ、最初は衛宮くんのこと『嫌いじゃない』って言ってたよね?」 「『まだ』嫌いじゃない、な」 「まだ…」 そこを聞き逃してしまうあたりが俺だな…。 まだってことは、これから嫌いになる可能性があるってこと…だったんだよね…? 人に判断を委ねちゃいけないけど、こうも彼氏選びに失敗すると何か…うん、何かだよね。 「…いっそほんとにふたりが付き合ってくれたらいいのに…」 贅沢~。なんて思ってちらっと笑う。 「「………」」 「え、何でふたりとも無言なの? そこは笑うとこでしょ?」 ふたりして顔を見合せて何も言わないってどういうこと。俺がすべったみたいじゃん! 「まぁ…蜜が本気なら吝かではないかな、と」 「え、ちょ、千歳、前向きに検討しなくていいんだよ? ちょっと、百も何か言って」 「ほんとに前向きに検討しなくていいのか?」 「へ…」 にまって笑う百に、俺はじわりと頬が熱くなるのを感じた。 「いやいやいや、待って落ち着いて」 「一番落ち着いてないのは蜜だな」 「確かにー」 「ちょ、ふたりとも何でそんな愉快そうに…!」 俺からかわれてる!? 「蜜が本気なら、って言っただろ? 今は度重なる失敗に気持ちが落ちてるとこもあるだろうから」 「千歳、度重なる失敗って言わないで」 いくら事実でも言っちゃダメ。 「どんな男でもよく見える時期っていうのが…」 「そこまで自暴自棄になってないから。そんな時期じゃなくても千歳と百はいい男だと思ってるし」 男見る目ないなぁ、ってちょっと凹んだのは事実。でもそれだけだし。自暴自棄にはなってない。 それに、まずは衛宮くんとのことを何とかしないと。 「まー俺ら本夫だから」 「そう言えばそうだったな」 「そういう扱いでいいんだ?」 委員長がふざけて言ってたんだと思ってたのに。 「蜜がつまみ食いしても戻って来んの分かってるし」 「なるほど、それが本夫の余裕」 「千歳もだからな?」 「つまみ食い、って…茅ヶ崎じゃないんだから違う言い方にして」 「寄り道? ふらふら? まぁいずれにせよ本気で好きなやつが見つかるまではこのままだろうな、とは思ってるし」 「それはねぇ、否定できないね」 絶対ふたりのとこに戻っちゃう。んで、甘やかしてーってやっちゃう。 「ずっと見つからなくてもいいと思う時もあるけどな」 「…っ」 不意打ちずるい。ドキッとしちゃう…。

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