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第166話

「けど本気で好きなやつが出来たら出来たでいいことだけど」 いいこと…。まぁ、それはそうか。そうだよね。 いつかはふたりから離れていかないと…。 ツキン、と胸が痛くなる。多分俺は、幼い独占欲みたいなので千歳と百を離したくないと思ってる。それが恋愛的な意味での愛情なのか…ちょっと、よく…分からなくなってきてる。 そういうことを考えずに当たり前にそばにいたんだもんな。 けど、そういうことも考えていかないといけないんだよな。 「…っていうか、ふたりは? 本気で好きな人」 「うーん…」 「え、なに百のその反応。いるの? いつの間に? 俺 知らない!」 「こら蜜、身を乗り出すな」 「だって! 千歳は知ってる?」 「百は意外と秘密主義なとこがあるからな。知らない」 「何か勝手にいる感じで話進んでね?」 「百が意味深な反応するから…」 百はけらけらと笑う。 「いるとは言ってないじゃん」 「でもいないとも言ってないよ…?」 「確かにそうだな」 ……え? いるの? いないの? どっちなの? 「千歳は?」 「おい百、この流れで俺に振るか?」 「いーじゃん」 「全く…。本気で好きな相手か…うーん…」 …千歳の『うーん…』はいない感じがする。 「まぁ蜜と百かな」 「それってLOVEなの?」 「ある意味ではLOVEだろ」 「…それもそっか」 聞きたかったのはそういうアレじゃなかったんだけど…でも恋愛的な意味ではいないってことでいいのかな。 っていうか百、流したよね? 話 流したよね? いやでも…これを問い詰めて明確な答えが出るのは少し怖い感じがする。 だって、本気で好きな人がいたら、俺は…離れないといけないから。 聞きたいけど聞きたくない。それなら聞かない。 まだ、ふたり一緒にそばにいてほしいの。 少し前までは、好きな人ができたらちゃんと言ってね、なんて言えてたのに…。いざそうなったら、そんな風に言えなくなってる自分が怖い。 俺はいつまで甘えるつもりでいるんだろう…。 成長……しないと。 購買で買ったアイスを食べながら寮へ帰って、百の部屋でゴロゴロしていると、千歳のスマホが鳴った。 「悪い、ちょっと電話」 「おー」 「どーぞー」 一言断った千歳が、洗面所の方へ消えていった。 「…千歳に電話って珍しいね」 何となく、千歳が出ていったドアを見てしまう俺。 「そうか?」 百がゲーム機から顔をあげた。

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