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第167話
「え。そんなしょっちゅう来てるの?」
「しょっちゅうかどうかは知らねぇけど、俺といる時はふつーに電話出るぞ」
「え。」
「蜜といる時が特別なだけ」
知らなかった。
「けど今出るってことは……何か大事な用かねぇ」
「大事な用…」
………彼女とか、彼氏とか…?
いや、本気で好きな人はいない感じだったから…。
「ふ。蜜 難しい顔してる」
笑われた。
「…さっき百が意味深な言い方するからだし」
「ミステリアスな方が暴きたくなって良いじゃん?」
「…暴いていいの?」
「中身はないかも知れないし?」
「……」
それは確かにそうなんだよな。
「…意地悪」
「拗ねると俺が千歳に怒られるから」
「じゃあ機嫌とってよ。全力で」
ことりとゲーム機を置く音がして、百が俺に向かって両手を広げた。躊躇いもなくそこへ飛び込んで、胸に顔を押し付ける。
髪に優しいキスが落とされて、背中をあやすように柔らかくとんとんと叩かれた。
「背中にひとり足りない…」
「電話終わるまで俺だけで我慢な」
「しょーがないなぁ」
百の膝に乗ってゆらゆら揺れていると千歳が戻ってきた。
「電話終わったか?」
「終わった、が…?」
「なら蜜の背中を頼む」
「そういうことか」
千歳が背中から俺の腰に腕を回した。
うむ。美形と男前サンド。
「あ、俺まだ元気が出るちゅーしてもらってない」
「アイスに夢中だったじゃん」
「だってアイスは放っとくと溶けちゃうもん」
「蜜は放っとくと拗ねる」
「そうだよ。分かってるなら早くぅ」
唇を尖らせると、百が笑って額にキスを落とした。そこじゃないんだけど。
千歳も後ろから俺のこめかみにキスをする。そこでもないんだけど。
「ちょっと?」
抗議の声を上げると、ふたりは視線を合わせて笑う。仲良しだな、もう。
後ろから顎を掬われて、千歳の唇が重なった。
「…これ体勢きついね」
「そうだな」
体捻らなきゃならないのがちょっと…。
体を戻せば百がキスをしてくれる。
…もし百に本当に好きな人がいたら、こんなことさせるのも悪い気がする。でも…。
「元気出てないな」
「出てないなぁ」
千歳と百が俺を見てそう言う。
うん。余計なこと考えちゃってるから。
「…百が意味深なこと言うから」
「あ、俺のせいだった」
「おい、責任とれ」
「千歳まで不機嫌」
ぎゅっと抱かれて耳に唇が触れる。衛宮くんにも同じとこに触れられたことがあったっけ。
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