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第169話
「なん、いや、俺が本気ならってさっき言ったじゃん!」
「蜜が本気なら付き合ってみる? ってこと」
「お…」
これは…何て答えるのが正解…?
でも…。
「俺まだ衛宮くんと別れてないし…」
「委員長の理論で行くとそっちはつまみ食いみたいなもんだからな」
「千歳…」
俺がこのふたりに抗えるわけがない。
だって…できるなら――絶対無理だって思ってたけど――ずっと手離したくないって思ってたから。大人になっても、ずっと。
でもそれは幼い独占欲で…。でも…。
ふたりに彼女ができて悲しかったのも、事実で。そばにいてほしくて。
無理だって思ってたから、他の人で埋めようとしてたの。
「…俺すごいワガママだし」
「知ってる」
「今さら?」
「…っ、ふたりに彼女できたら泣くし」
「ごめんな、それも知ってた」
「泣かせて悪かった」
「…本気にして、いいの…?」
千歳と百が目を合わせた。
「「いいよ」」
張りつめていた何かが、ぷつりと切れる音がした。
ぽろりとこぼれたのは涙で、頬にふたり分のキスが落ちてきた。
「これってでも…恋愛的な好きなのかただのワガママな独占欲なのか、分かんないんだけど…」
「どっちだと思う? 千歳」
「そうだな…両方じゃないか?」
「だそうだ」
「そん…そんな簡単でいいの…?」
「だって蜜って彼氏に『触んないで』って言った後ふつーにべたべた甘えてくるし」
「そうだな」
「え」
「俺らが歴代の彼氏に死ぬほど嫉妬されてたの知らないだろ?」
「ただの幼なじみなんだったら弁えろとか距離が近すぎるだとか気安く触るなだとかハサミ持ち出されたこともあったな」
「あー、あったあった」
百けらけら笑ってるけど…いや俺知らないよ!? 何それ!!
っていうか笑い事じゃなくない!?
「でもあれは百が散々からかって遊ぶからだぞ」
「えー? 千歳も人のこと言えなくね?」
「短時間でも蜜を独り占めさせてやってたんだから有りがたく思うのは当たり前だろ」
「ほらぁ~」
俺は今、千歳に髪を撫でられ百の指をにぎにぎしながら、考えることを放棄しました。
だってふたりがそばにいてくれるのは変わらないから。それならこの関係につける名前が幼なじみでも恋人でも、何でもいいの。
それに、誰より甘えられるのはこのふたりしかいないのはよく分かってるから。
大好きだから。これは脆く崩れてしまうような恋じゃない。離したくない、繋がっていたい愛だ。
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