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第171話

「茅ヶ崎さぁ」 「うん、なぁにぃ~?」 「衛宮くんのことどう思ってる?」 「女王様が別れるって決めたから言うけどぉ、気に食わない」 「……」 最後だけいつもの間延びした喋り方が消えた。ほんとに気に食わなかったのね。 「それでぇ? 騎士様たちを文字通り独り占めぇ~?」 ニヤニヤしてやがる。 どうでもいいけど、ほんと何でそういうとこだけ鼻が効くんだろう。 「うふふぅ~。いいなぁ~」 「念のため聞くけど、それはどっちが?」 「どっちもぉ~。言ったでしょぉ? 女王様も可愛がりたいしぃ~、いい男とも遊びたいしぃ~。んでも、今はそうだなぁ…騎士様たちのが羨ましいかなぁ~?」 目を細めてにまりと笑う茅ヶ崎。 この表情は初めて見た。 「女王様、僕にちょっかい出されないようにしてね?」 「いや、出さないようにしてよ」 「それは無理だよぉ~。だって食指動くもん~」 「笑顔で恐ろしいな」 「女王様の背後も恐ろしいから大丈夫ぅ~」 「千歳、恐ろしいって言われてんぞ」 「はは、百の方だろ」 「どっちもだよねぇ~」 「頼もし過ぎて困っちゃうよねー」 「女王様ぁ、それはのろけ~」 「え、違うし」 「そうですぅ~。もうさぁ、鏡で自分の顔見てきなよぉ~」 は? 「天使のように可愛い顔が映るだけだけど?」 「ん~そこに華やかさプラスされてるよぉ~。そんなに分かりやすく変わるんだねぇ~、女王様も」 「…っ」 俺は思わず両手で頬を触った。まじか。 「可愛い反応しちゃってぇ~」 ふふふ、と茅ヶ崎は笑って俺の顎に指で触れた。すぐに千歳に払われてたけど。 「僕に食べられないように気をつけてね?」 「なん…っ」 「今日のご褒美は別でやるからそれで我慢な、茅ヶ崎は」 「う~ん、仕方ないねぇ~」 百に言われて、茅ヶ崎は肩をすくめて離れた。今日のご褒美とは…? いやまぁいいんだけど。 「でもいつかは女王様も味見させてほしいなぁ~」 「その『いつか』は一生来ないから安心しろ」 「もぉ~。意外と須賀谷くんの方が独占欲強い感じぃ~?」 「何言ってる。俺の方が分かりやすいだけだ。百の方が多分何か…何か黒い」 「おい、千歳」 「それはそれですっっっごく燃えるぅ…!」 茅ヶ崎に火をつけるのやめて。 とりあえずごはん食べよう。ごはん食べて、明日のこと考えよう。 そうしよう。

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