「大丈夫だって」 その言葉に、千歳は小さく頷いた。 「頼んだ」 「頼まれた」 百と香月さんはあんまり相性よくなくて、多分 衛宮くんともあんまりよくない感じはするんだけど。まぁでもそこはきっとうまくやってくれるだろう。 百は俺たちよりも先に行くと、かなり雰囲気の悪い２人に声をかけた。俺たちはそれを尻目に素早く校門を抜ける。 悪目立ちしてるけど？ なんて百の声を聞きながら。 「うるせぇな、てめぇには関係ねぇだろうが」 衛宮くんの吐き捨てるような品のないその言い方に、俺の足が止まりそうになる。 「蜜」 でもそこは、千歳に腕を引かれた。 「…だって…、なに、あれ」 「女王様…」 「そういうやつだ、ってことだ。分かってよかったじゃないか」 「そうだけど…」 何あれ。 「百にあんな言い方するの…許せない」 何あれ。何なの？ 「何あのクソ偉そうな態度！ 言い方！ 腹立つ！」 「うわ、女王様かなりご立腹じゃぁん～…」 「相当ご立腹だな…。気持ちは分かるが」 「やっぱり戻って別れるって言ってくる！」 「こらこら、落ち着け蜜」 「そうだよぉ～。今は藤くんに任せとこぉ～？」 「…、っ」 そりゃ、百は上手く躱して宥めて戻ってくると思ってはいるけど。校門前であんなことして、一方的に感じ悪く噛み付いて、衛宮くんが勝手に評判落とすだけ、って分かってはいるけど。それでも気分悪い。 「千歳は…嫌じゃないの」 「嫌に決まってるだろ。とりあえずぶちのめしたいくらいだ」 「…とりあえずでぶちのめすならほんとはどうしたいんだろうねぇ～…」 頭から地面に埋めたいくらいなんじゃないの？ 二度と顔見なくて済むように。 「須賀谷くんってぇ～、女王様のことだけじゃなくて藤くんのことでも導火線短くなるんだねぇ～」 「俺は蜜とは違う意味で百のことも大事だからな」 「あ～…やばいすごい滾るぅぅ～…！」 「ちょっと茅ヶ崎」 「怜悧な男前とさぁ、優艶な美形だよぉ？」 「だから何。怜悧な男前も優艶な美形も俺のなんだけど」 「女王様の独占欲頂きましたぁ～！」 「可愛いな、蜜は」 「俺が可愛いのなんて当たり前でしょ」 ちょっと…かなり照れる。 千歳に可愛いって言われるのなんて全然初めてでもないのに。慣れてるのに。 「照れてる女王様も可愛いねぇ～。食べちゃいたいくらい」 「茅ヶ崎、蜜の半径２メートル以内に近づくな舌なめずりするな」