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第174話
「あっそれはやめてぇ~」
茅ヶ崎のネバーギブアップ精神すごい。へこたれないな。
だからって食べさせてあげるわけにはいかないけどね。俺はそんな、あんこのつまったヒーローみたいな奉仕の精神に満ちてないの。まぁあれは顔だけどさ。俺が食べたいって言われてるのは身体だし。
「昼休み話したいことがあるってLINE送っとこうかな…」
「そしたら衛宮くん、午前中ずっとそわそわしてるんだろうなぁ~」
「嫌な予感にそわそわするんだな、分かるぞ」
「……須賀谷くんが拳固めてるぅ…」
でも待って。
まずは百が戻ってきてからだな。様子聞いてみて。
イライラのまま行動したってよくないもん。
「千歳」
両手を広げると、千歳は俺の意図を正確に理解して同じように腕を広げた。
そしてそのまま俺たちはぎゅうっと抱き合う。
「ちょっと落ち着かないとね」
「そうだな」
百なら大丈夫。俺たちがただ衛宮くんの態度にイライラしてるだけ。
慣れた温度に心は落ち着く。
「僕も混ざっていい~?」
「茅ヶ崎は…へんなとこ触りそうだから…」
「そんなことしないよぉ~多分」
茅ヶ崎が混ざる前に千歳と離れる。
とにかく教室に行って、それで百を待とう。
心を落ち着けておとなしく待っていると、百が委員長と一緒に教室に入ってきた。
…何だかんだ百と委員長って仲いいんだよなぁ。ちょっと妬ける。
「おっと、藤棚。女王様が俺を恨めしそうな目で見てるぞ」
「え、何やらかした?」
「何もしてないぞ」
「委員長、いい加減なこと言わないでよ」
何で俺が委員長を恨めしそうな目で見なきゃいけないの。…妬いたのは事実だけどさ。
「女王様の本夫を取るつもりはないからな?」
「当たり前でしょ。そんなことしたら許さない」
「俺が蜜以外を選ぶわけないだろ」
百は笑ってそう言うと、こっちへ来て俺の頬を撫でた。ついでに千歳の頬もつついてた。
百にはやめろとか言わないのが千歳だな、って思う。他の人にやられたら絶対無言で手を払ってる。
「何もなかった? 大丈夫だった?」
俺が聞くと、百は問題ないと言うように穏やかに笑った。
「蜜が気にするようなことは何もねぇよ。大丈夫」
「殴られたりしてない?」
「ないない。人目があるところではしないだけの分別はあるだろうし」
「…ってことは、人目がなかったらしてたってこと?」
「まぁ可能性はゼロじゃねーな」
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