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第178話
余裕と自信、か…。
それが今はちょっと嬉しいと言うか…俺って単純。
「でもぉ、先輩とはキス止まりだったけどぉ、もしそれ以上求められてたら心境としては穏やかではいられなかったんじゃなぁい~?」
「蜜がその気ないのは見てて分かったし、求められても応えないだろうな、って」
百が言うと、茅ヶ崎は頷いた。
「ほんとに女王様のことよく分かってるんだねぇ~」
「無理矢理どうこうされそうになったらぶちのめせばいいと思ってたしな」
「…やっぱり須賀谷くんの方が導火線短い…?」
香月さん…無理矢理どうこうするような人じゃなくてよかったね。千歳にぶちのめされなくて済んだよ。
「女王様 幸せだねぇ~、こんないい男ふたりに大事にされてぇ~」
「ふふん。そうでしょ?」
「今すごい女王様って感じしたぁ~」
なんて戯れていると、
「――相瀬」
偉そうに俺を呼ぶ不機嫌な声が聞こえた。
「あはっ。王様気取りの衛宮くんどうしたのぉ~?」
先制パンチを繰り出したのは茅ヶ崎だった。
衛宮くんは怒気を隠さなかった。
「…お前に用ねぇんだけど。黙っとけよ」
「僕に命令出来ると思わないでくれるぅ~? 三下の分際で」
茅ヶ崎めっちゃ容赦ないじゃん。そんなに嫌いだったんだ…。
衛宮くんはものすごくイライラした様子で口を開いた。憎々しげに教室中を見回しながら。
「お前らさぁ、最低だよな。人のプライバシー侵害しといて平気な顔で相瀬の前にいられんだな。どんな神経してんだよ」
「……は?」
不機嫌な声は俺の口から発せられた。
何この人。クラス全員ディスるとかどういうこと?
そっちがどんな神経してんの?
「相瀬知らねーの?」
「…何の話?」
上から目線でせせら笑うようなその口調が、俺はものすごくものすごく気に食わない。
「こいつらさぁ、結託して俺の身辺洗い出したんだとよ。最低じゃね?」
結託…? 洗い出す…?
「そうだよなぁ? 藤棚、須賀谷」
名指しされたふたりを見る。
千歳は、それが? みたいな無表情だったし、百はただ口の端を吊り上げただけだった。
それが事実だとして、洗い出すとか出来ちゃうのがすごいんだけど…誰がどうやったの? 本職の人頼んだの?
「…それは、衛宮くんにそうするだけの疑惑と言うか…そういうのがあったから…?」
俺の問いには、百からニコッと可愛い笑顔で返事が返ってきた。なるほど。
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