ぴくりと眉が動いて、眉間にシワが寄ったのを見た。 俺ってば正直だから、言わなくていいことも言っちゃうんだよね。 「お前さぁ、」 「はい無理。付き合ってるからってお前って呼ぶ人嫌いなんだよね」 「…誰と付き合ってんだよ」 「衛宮くんと『付き合ってた』んだよ」 百と千歳と付き合うつもりだけど、別にそれは言わなくてもいいこと。 「勝手に終わりにしてんじゃねーよ」 「偉そうに命令してんじゃねーよ」 口調を真似て返してあげると、衛宮くんの眉が吊り上がった。 「恋愛の終わりなんて勝手なもんでしょ。どっちかが無理だと思ったら無理なんだから。とにかくこの話は昼休みにして。みんなから話聞くのが先だから」 「……勝手なこと言ってんなよ」 「後にして、って言ってるじゃん」 めんどくさ。 そんな気持ちを隠さず顔に出す。 「付き合っててもこいつら選ぶのか？」 「俺と衛宮くんの付き合いってそんな深くないじゃん」 「どの口が言ってんだよ。深くしようとしなかったのは相瀬だろうが」 「…だって」 だって、本気で好きになれなかったから。 それをここで言ってもいいの？ いいなら言うよ？ 「友達から始めたけど、頷いたのは確かに俺だけど、でも、本気で好きだと思えなかった」 「へぇ。弄んでたわけだ？ すげーな相瀬」 「弄んでたとは一言も言ってないでしょ。知ろうとしたし、好きになるための努力したよ。俺なりに。けど、」 「よくそれで平気な顔して俺の隣にいれたよな」 何こいつ。めんどくさ。 「…分かった。俺が一方的に衛宮くんを傷つけたでいいよ。それでいい」 そうやって、全部俺のせいにすればいい。 「そんな最低なやつと思っていいから別れよ」 あー何か香月さんともこんなようなやり取りしたなぁ…。俺ってほんと男見る目なかったなぁ…。 過去形なのは、今はもう百と千歳がいるからね。 「――バカバカしい」 ため息を吐き出すように口を開いたのは千歳だった。 「そもそも好きになるための努力をされてる時点で望みがないと自分で察するべきだったんじゃないのか？ 努力しなきゃ好きになってもらえないどころか、努力しても好きになってもらえなかったんだからな」 千歳めっちゃ抉るじゃん。 「俺はいつも歴代の蜜の彼氏に言ってきたんだけどな、」 言葉を切って、千歳はうっすら嘲笑を浮かべた。 「ほんの少しでも蜜を独占させてやったんだ。感謝しろ」