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第184話

『ちょっと』で身辺洗い出せちゃうんだもんな。 「それはさ、俺のため…って思っていい?」 「半分は蜜のためだけど、もう半分は自分たちのため、だな」 「どういうこと?」 首を傾げると、百はゆるりと微笑んだ。 「聞いた話が本当だったら、衛宮から蜜を引き離す大義名分が出来るだろ」 千歳が俺を抱えたままそう言って、ゆっくり髪を撫でた。 ちょっと…かなり、照れる。 「もーほんとに俺のこと好きだよね」 「当然」 「好き以外何もねぇよ?」 からかったつもりなのに…これはかなり照れる。 「…女王様が返り討ちにあってる。可愛い」 「え、めっちゃレア。可愛い」 「あれガチで照れてる。可愛い」 「可愛いの極み」 「もうっ、みんなうるさいっ」 俺が可愛いのなんて当然なんだから! 絶対赤くなってる顔を見られたくなくて、千歳の胸に顔を押し付ける。 千歳が小さく笑って俺の髪を撫でた。 「でもまぁ、引き離す以前の問題で、蜜は衛宮のこと好きになってなかったしな。それに焦ったのか、衛宮はボロ出してくれたし」 ボロ、か。 腕掴んだり思い通りに動かそうとしたり、それはそういうことなんだろうな。 プライバシーの侵害は、ダメだけど。でも守ろうとしてくれたからであって。それを責めることは、俺には出来ない。 大好きな人たちといることで価値が下がるとかどうとか、そんなもんクソ食らえだし。 「それ聞いても、やっぱり別れたいことに変わりないもん。付き合ってくのは無理」 俺の意思は変わらない。 「…色々、ごめんね。…ありがと」 誰かが「デレた…」って言ったけど、今回だけは見逃してあげる。 「ツンツンしてる女王様も可愛いけど素直な女王様も可愛いよねぇ~」 「俺は何しててもいつも可愛いの」 「強気な女王様も可愛いよぉ~」 「当たり前でしょ」 「デレが短いのも可愛いよねぇ~」 「デレじゃない」 俺と茅ヶ崎のやり取りを聞いて、百がちょっと笑う。 俺はワガママだからさぁ、千歳の膝に乗りながら百も欲しいんだよね。 「ところで百は何で離れてるの? 拗ねるよ?」 「拗ねても可愛いから見てていい?」 「なん、っだ、だめっ」 そんな風に返ってくると思わないじゃん! 不意討ちにぶわりと頬が熱くなるのを感じて、慌ててまた千歳の胸に顔を押し付けた。 今のはずるい…! 「…藤くん」 「どうした? 茅ヶ崎」 「今の女王様の反応が死ぬほど可愛いです」

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