185 / 240

第185話

「死ぬほど可愛い蜜が見れてよかっただろ」 「うん~。でもぉ、藤くんが罪な男っていうのも分かったぁ~」 「舌なめずりしながらこっち見んのやめて?」 何してんだ茅ヶ崎。 「今のはずるいよね、千歳」 「そうだな。蜜は可愛かったけど」 「だから…っ、もう…」 何かさ。ふたりから言われる『可愛い』はすごく特別な響きに聞こえるの。 それって俺の自意識過剰? 関係が変わっただけでそんな風になっちゃうの…。恥ずかしい…。 「…拗ねてやるんだから」 それは困る、なんて言いながら、千歳が額にキスをした。 「…百」 名前を呼んで、自分の唇を指差す。 百はちゃんと理解して、小さく笑って俺のそばへ来ると唇に柔らかくキスをした。 押し殺した歓声みたいなのが教室のどこかで上がったけど、それは気にしない方向で。 「俺にはないのか」 「嘘でしょ千歳さん」 「いや、純粋に興味があって」 そう言えばそんなこと前も言ってたね、千歳。 「ちょっ、えっ、須賀谷くん、藤くんとキスしたいくらい好きなの…っっ??」 「茅ヶ崎、ちょっと落ち着きなさい」 「藤棚、それは少々無理だ。俺もちょっと興奮してる」 「おい、委員長」 「あと藤くんのキスやっぱエッチ~」 「千歳もして」 顔を上向けると、千歳が優しいキスをしてくれる。 「もいっかい」 一回ずつじゃ満たされない。 「百も もーいっかい」 「はいはい」 百は俺の唇にキスをして、そのあと千歳の頬にもキスをした。 「千歳はそれで我慢な」 千歳は頬を押さえて百を見てたし、みんなは何だか変なテンションで「うわっ、えっ、今のっ、えっ」「…ちょっとキュンとした…」「えっ…やば…」なんて興奮してた。気持ちはすごく分かる。分かりすぎるほど分かる。萌えた。 「百…。キュンとしたから責任とってくれ…」 「嘘でしょ千歳さん!」 「藤くん…罪な男…」 えっと…待って。千歳も百も俺と付き合うんであって…えーっと…でも千歳と百がふたりで付き合うのもアリと言えばアリ…なのか…? えっ、でもそしたら俺ひとりになっちゃうじゃん。やっぱダメ。 「千歳と百が仲良くする分には構わないけど、俺をひとりにするのはダメ。仲間外れよくない」 「蜜の前でならいいか?」 「千歳は何で前向きに捉えてんの?」 「うーん…それならまぁいいよ」 「うっそだろ」 「…藤棚がツッコミだけしてるって珍しいな」 「ツッコミはいつも須賀谷くんの役目だもんねぇ~」

ともだちにシェアしよう!