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第185話
「死ぬほど可愛い蜜が見れてよかっただろ」
「うん~。でもぉ、藤くんが罪な男っていうのも分かったぁ~」
「舌なめずりしながらこっち見んのやめて?」
何してんだ茅ヶ崎。
「今のはずるいよね、千歳」
「そうだな。蜜は可愛かったけど」
「だから…っ、もう…」
何かさ。ふたりから言われる『可愛い』はすごく特別な響きに聞こえるの。
それって俺の自意識過剰? 関係が変わっただけでそんな風になっちゃうの…。恥ずかしい…。
「…拗ねてやるんだから」
それは困る、なんて言いながら、千歳が額にキスをした。
「…百」
名前を呼んで、自分の唇を指差す。
百はちゃんと理解して、小さく笑って俺のそばへ来ると唇に柔らかくキスをした。
押し殺した歓声みたいなのが教室のどこかで上がったけど、それは気にしない方向で。
「俺にはないのか」
「嘘でしょ千歳さん」
「いや、純粋に興味があって」
そう言えばそんなこと前も言ってたね、千歳。
「ちょっ、えっ、須賀谷くん、藤くんとキスしたいくらい好きなの…っっ??」
「茅ヶ崎、ちょっと落ち着きなさい」
「藤棚、それは少々無理だ。俺もちょっと興奮してる」
「おい、委員長」
「あと藤くんのキスやっぱエッチ~」
「千歳もして」
顔を上向けると、千歳が優しいキスをしてくれる。
「もいっかい」
一回ずつじゃ満たされない。
「百も もーいっかい」
「はいはい」
百は俺の唇にキスをして、そのあと千歳の頬にもキスをした。
「千歳はそれで我慢な」
千歳は頬を押さえて百を見てたし、みんなは何だか変なテンションで「うわっ、えっ、今のっ、えっ」「…ちょっとキュンとした…」「えっ…やば…」なんて興奮してた。気持ちはすごく分かる。分かりすぎるほど分かる。萌えた。
「百…。キュンとしたから責任とってくれ…」
「嘘でしょ千歳さん!」
「藤くん…罪な男…」
えっと…待って。千歳も百も俺と付き合うんであって…えーっと…でも千歳と百がふたりで付き合うのもアリと言えばアリ…なのか…?
えっ、でもそしたら俺ひとりになっちゃうじゃん。やっぱダメ。
「千歳と百が仲良くする分には構わないけど、俺をひとりにするのはダメ。仲間外れよくない」
「蜜の前でならいいか?」
「千歳は何で前向きに捉えてんの?」
「うーん…それならまぁいいよ」
「うっそだろ」
「…藤棚がツッコミだけしてるって珍しいな」
「ツッコミはいつも須賀谷くんの役目だもんねぇ~」
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