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第186話
何となく。千歳が百も好きなのちょっと分かるから。俺に向けるのとまた少し違う感じはするんだけど、間違いなく千歳は百が好きなの。それこそ、キスしたいくらいの気持ちの好きなんだと思う。
「でも百は俺のなんだから、千歳にそんなに譲らないからね?」
「どれくらい譲ってくれるんだ?」
「本人の前で交渉すんのやめなさい。10割蜜のだから」
「藤くん全部女王様のもの、って…何かエロチック…」
「突っ込むのめんどくさくなってきた…」
「藤くん諦めないでぇ~!」
10割俺の、って…うん、何かいいね。
「0.2割かな」
「0.5割!」
「俺で競りをするな」
「ダメ。百は俺の。千歳も俺の」
「…仕方ないか」
「仕方なくねーから」
ってか衛宮くんの話してたのに、どうしてこうなったんだろ。謎。
「蜜のこと考える0.2割 俺のこと考えてくれればそれでいいから」
「……仕方ねーな」
何だかんだ、百も千歳のこと好きだもんね。
「俺は蜜のこと考える0.8割くらい百のこと考えてるけどな」
「俺いま口説かれてる?」
「僅かばかり」
千歳がニヤッと笑って、百も息を吐いてちょっと笑った。
「仕方ねーな」
そう言って千歳の目蓋にキスを落とした百に、教室中がまた興奮の嵐に包まれて。
俺は、このクラスは愉快だなぁ…、ってぼんやり思っていた。
さて。
そうこうしているうちに昼休みは来る。その間特筆すべきことは何もなかったから飛ばさせてね。
とりあえず別れる意向は伝えてあるし、身辺洗い出した経緯も聞いたし、それでも気持ちは変わらなかったし。
「別れよ」
それを再度…再々度?ストレートに衛宮くんに告げた。
めちゃくちゃ嫌そうな顔された。
「…あのさぁ、相瀬」
「なに?」
話聞こうとしてあげる俺、なんて優しいんだろう。
「1ヶ月何だったわけ? 好きじゃないまま何で俺といたんだよ」
何で…。
「好きになれるかな、と思ってた。それだけ」
「1ヶ月も?」
「1ヶ月も。頷いたのは俺だし、一緒にいたら楽しいかな、って思ったのは事実だし。言ったでしょ。俺なりの努力をしてたの」
「…努力してこれ?」
「言いたいことは分かるけど仕方ないじゃん。歩調が合わなかったの、俺と衛宮くんは」
俺はゆっくりだったけど、衛宮くんは速足だった。そんな感じがする。
「…相瀬の歩調に合わせればいいのか?」
「違うよ。もうそこじゃなくて、破綻してるの。既に」
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