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第190話
「だからって…」
「ワガママでめんどくさい俺のことぜーんぶ愛してくれるし、何でも理解してくれてるし、これ以上ない最高で自慢の彼氏なの」
背伸びをして、ふたりの唇にそれぞれキスをする。
「だからモラハラDV男なんてお呼びじゃないんだよね」
「最高に女王様。」って茅ヶ崎の感想はとりあえず無視で。
「もちろん別れてくれるよね?」
「…っ、そ…っ」
「ま、別にそっちの了承なんてどうでもいいけど。俺はふたりと存分に楽しむつもりだから、邪魔しないでよね」
ぺっ、って吐き捨てるような言い方になってしまった。まぁいいや。
「………女王様、存分に楽しむって具体的にどんな楽しみ方するのぉ? エッチ? エッチするぅ?」
「何でそうなるの?」
「雰囲気がエッチだったからぁ~」
「しないよ」
まだ、しない。
俺が、いつかそういう気持ちになったらしてもらう、けど。今はまだ。
「3人って……何だよそれ! ビッチって間違ってねぇ――グッ」
「うちの女王様の耳汚しやめてくれる?」
衛宮くんの顎をがっちり掴んだ百が、冷たい目でにこりと笑う。
「千歳と俺で大事に可愛がるんだから、負け犬はただ黙って指咥えてればいーの」
「…藤くん、そのセリフはエロい」
「百が可愛がるって言うといやらしさはあるよな」
「何でだよ。千歳みたいな男前が言った方がギャップでいやらしくなるだろ」
「う~ん、それも捨てがたいねぇ~」
脱線してるよ、みんな。
「前みたいに、見てるだけなら許してやるよ」
「なん、」
「1ヶ月も彼氏でいさせてやったんだから、感謝しろよ?」
「てめぇ…ッ」
「じゃーね、衛宮クン」
「今の『衛宮クン』の言い方最高に嫌味ったらしくていいな、百」
「千歳、それどんな感想?」
おざなりに手を振った百と千歳の会話を聞きながら、俺は衛宮くんと過ごした日々を思い出していた。
楽しいと思えたのは最初だけだったな。不機嫌だったり上からだったり、そういう態度が増えていって、気持ちは育たなかった。
ツンツンしてる俺が従ったらきっと、衛宮くんの支配欲的なものは満たされたんだろう。そんなもの満たしてやる義理もない。
俺を支配できるのは俺だけなんだから。
「はぁ~。女王様たちのちゅー見てたらエッチしたくなっちゃったよぉ~」
「とんでもないのブッ込んで来るのやめて、茅ヶ崎」
後ろが疼くから相手探してくるぅ~、って駆けていく茅ヶ崎の背中を見ながら、俺はひっそり息を吐いた。
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