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第194話

何でちょっと機嫌よさそうなの。ケガまでしてるのに。 「女王様はぁ、可愛いねぇ~」 「はぁ? そんなの当然だけど、今はそういうことじゃなくて、衛宮くんが関係してるんじゃないかって心配をしてるの」 「うん。それは僕も思ったよぉ? あいつ絶対ねちっこいもぉん」 「だから、みんなに何かあったら嫌だから…!」 「う~ん…女王様の気持ちも分かるんだけどぉ、心配してくれるのも嬉しいしぃ、けど僕らは女王様に何かあったら嫌なんだよねぇ~。ま、騎士様ふたりもいて手出しなんか出来ないだろうけどねぇ~」 ひらひらと手を振る茅ヶ崎。俺はただ、歯がゆい気持ちが溢れそうだった。何でこういう時、俺は何も出来ないんだろう。 「茅ヶ崎、襲ってきた相手は分かるか?」 千歳が聞くと、悪い笑みを浮かべた茅ヶ崎がポケットから何かを取り出した。 あれは…カード…? えっ、っていうか、学生証…。 「抜き取ってきたぁ~」 「さすがだな」 「恐れ入りますぅ」 …茅ヶ崎を襲った人たち、今頃困ってるだろうなぁ…。あれ、カードにバーコードついてて買い物とかも出来るようになってるし、図書館とかもあれで入るし、パソコンの認証もあれだし、とにかく色々使うもん。 俺は基本お財布と学生証と分けてお金入れてあるけど、全部学生証って人もいるもん。 「須賀谷くん、そのカードどうするぅ?」 「とりあえず情報は全部控えておいて、真っ二つにすればいいんじゃないか?」 千歳が冷たい目で笑った。 「きゃははっ、無慈悲ぃ~」 そんで茅ヶ崎もほんと楽しそうに笑うよね…。 百がそっと俺の背中を撫でてくれる。俺はそれにホッと息を吐いた。 こんなこと、他にもあったら嫌だ。 まだ衛宮くんが関係してるとは全然分からないけど。もしかしたら本当に全く関係ないかも知れないし。 でも…不安なの。 「そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だ」 委員長の声に、俺は顔を上げた。 視線の先で、委員長は不敵に笑う。 「こんなこともあろうかと、全員に噴射した相手に色のつく特殊な催涙スプレーを配布してある」 「えーっと…委員長の家って、アパレル関係だったよね?」 決して防犯グッズを扱ってるような事業ではなかったはず。 「アパレルはライバルが多いからな。色々な事業を抱えておいて損はない」 それはそうだけどね。 「これは女王様のだ。お守りとして持っておくといい」 「ありがと…」 手のひらサイズのボトル。これを使う日が来ないといいとは思う。

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