196 / 240

第196話

楽しそうに笑う茅ヶ崎は本当に鬼なのかもしれない。 今日1日見つからなくてもおかしくないような状況だもんな。 学生証に目を落とせば、2人とも寮生だし。厳密な点呼があるわけでもなし、発見される可能性は極めて低い……ような気がする。可哀想に。 「まぁでも、発見して差し上げてもいいかもな」 「須賀谷くん、悪い顔になってるよぉ~」 「そんなわけないだろ」 蜜の前では気をつけている。 耳を塞がれたままの蜜は頬を膨らませながら百に抱きついて、「みんなで子ども扱いする…」と拗ねていた。 可愛い。 百が苦笑いで耳から手を離した。 「子ども扱いじゃなくて、綺麗なままでいて欲しい的な願望なんだけど」 「……ずっと? そういう…えっちなこと知らないままでいいの?」 「知りたいならふたりがかりで教えるけど?」 「っ!!」 目を細めて笑う百に、蜜が顔を真っ赤に染めた。 可愛い。 「藤くん今の表情すごいエロい。はぁ~、一回相手してくんないかなぁ~。抱かれたいぃ」 「おい。欲望がただ漏れだぞ」 「めちゃくちゃにされたいんだよねぇ~」 2人くらい性的にめちゃくちゃにしてきて何を言っているんだ、茅ヶ崎は。 「お…教えてもらうのは、まだ…」 「分かってるって。俺たちもまだじっくり愛でてたいし」 「じゃあ存分に愛でていいよ?」 後で存分に愛でよう。 「僕も存分に愛でてい~いぃ?」 「茅ヶ崎は何か嫌な予感もするからダメ」 「えぇ~」 すげなく断られた。 「とにかく、こんなことが続くようなら催涙スプレー以外の対処も考えないとな」 「まぁそ~だよねぇ。女王様だけじゃなくて、なるべくみんな独りにならないようにしといた方がいいねぇ」 「寮生はみんな一緒に行動すればいいとして…」 「帰る方向が同じ者同士、しばらくまとまって動くことにするか」 「そうだな」 委員長の提案に頷く。 茅ヶ崎を襲った2人はしばらく転がしておきたい気もするが、早めに情報を確認しておいた方がいい気もする。 午後は放っておいて、放課後見に行くか。 ――と、思っていた時期もありました。 「…うわ」 授業が終わって、帰るべく玄関へ向かった。下駄箱の前に人だかりが出来ていて、何だ?と思って覗くと、蜜の靴にベッタリと液体がかかっていた。 まぁうん。恐らくあれだ。男の体液。 「この靴もう履けない…」 「気持ちは分かる」 どうするかな、と思って百を見ると、百は小さく首を振った。このままにしておけ、と?

ともだちにシェアしよう!