197 / 240

第197話

百がちらりと視線を送った先にいたのは、蜜の過激なファンの1人。なるほど。 彼らを泳がせて犯人を見つけてもらおうってことか。 こっちは茅ヶ崎を襲った犯人から話を聞かないといけないしな。 「次の休みに靴買いに行くか。3人で」 百が蜜の髪を撫でながら言う。 「…うん」 「他に行きたいとこは?」 「ん…百と千歳と一緒ならどこでも」 素直な蜜が可愛い。 俺も柔らかい髪に手を伸ばして、そっと撫でる。 可愛い女王様を悲しませるような不届き者は、どうしてくれようか。 百が蜜のカバンを持ったので、そのまま蜜を抱き上げた。 「何か買ってくか?」 「…ううん。早く帰ろう」 早く帰って甘やかしてよ、と、蜜は小さな声で呟いた。 「女王様の靴にせーえきかけるなんて度胸あるよねぇ~」 「茅ヶ崎は何に感心してんの?」 「だって藤くん、須賀谷くんもだけど、犯人見つけたら許さないでしょぉ?」 「うーん…許さないって言うか……、な?」 「うわ今 僕 背中がゾッとした」 だから言ったのに。俺の方が分かりやすいって。 百はほんとに腹の底が見えない時がある。 だからこそ頼もしいし、蜜とはまた違う意味で惚れてもいるんだけどな。 寮へ帰って、茅ヶ崎を念のため部屋まで送る。そして俺たちはそのまま同じ階にある百の部屋へ。 「ただいまー」 「俺の部屋だけどおかえりー」 俺と蜜はラグの上へ。百は手を洗って簡易キッチンへ行くと、飲み物を持って戻ってきた。 「さて。これからどうする?」 「何の対策もなし、とはいかないからな。後手に回るのは性に合わない」 そうだね、なんて言いながらスマホをいじった百は、画面を俺に向けた。蜜は膝の上に対面に乗ってるから、その画面は見えない。そこには一言だけ、『一応 衛宮張っといてるけど』と打ち込まれていた。 仕事が早い。 社長子息だからか、百の世界は俺たちより広い。当然 交遊関係も幅広く、色々な知り合いが至るところにいる。 百個人の繋がりを利用させてもらうのは心苦しいが、本人は「こういう時に使わないでいつ使うの?」とケロッとしている。 「とりあえず茅ヶ崎と一緒に犯人に会いに行くかな」 「ありとあらゆる体液でべっとべとの人たちに?」 「…そうだな」 百…他に言い方はなかったのか…? 「千歳…俺も行っちゃだめ?」 「蜜は…」 見せたくないな…。 「俺に関係無いことならいいんだけど…何か胸がざわざわする」

ともだちにシェアしよう!