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第197話
百がちらりと視線を送った先にいたのは、蜜の過激なファンの1人。なるほど。
彼らを泳がせて犯人を見つけてもらおうってことか。
こっちは茅ヶ崎を襲った犯人から話を聞かないといけないしな。
「次の休みに靴買いに行くか。3人で」
百が蜜の髪を撫でながら言う。
「…うん」
「他に行きたいとこは?」
「ん…百と千歳と一緒ならどこでも」
素直な蜜が可愛い。
俺も柔らかい髪に手を伸ばして、そっと撫でる。
可愛い女王様を悲しませるような不届き者は、どうしてくれようか。
百が蜜のカバンを持ったので、そのまま蜜を抱き上げた。
「何か買ってくか?」
「…ううん。早く帰ろう」
早く帰って甘やかしてよ、と、蜜は小さな声で呟いた。
「女王様の靴にせーえきかけるなんて度胸あるよねぇ~」
「茅ヶ崎は何に感心してんの?」
「だって藤くん、須賀谷くんもだけど、犯人見つけたら許さないでしょぉ?」
「うーん…許さないって言うか……、な?」
「うわ今 僕 背中がゾッとした」
だから言ったのに。俺の方が分かりやすいって。
百はほんとに腹の底が見えない時がある。
だからこそ頼もしいし、蜜とはまた違う意味で惚れてもいるんだけどな。
寮へ帰って、茅ヶ崎を念のため部屋まで送る。そして俺たちはそのまま同じ階にある百の部屋へ。
「ただいまー」
「俺の部屋だけどおかえりー」
俺と蜜はラグの上へ。百は手を洗って簡易キッチンへ行くと、飲み物を持って戻ってきた。
「さて。これからどうする?」
「何の対策もなし、とはいかないからな。後手に回るのは性に合わない」
そうだね、なんて言いながらスマホをいじった百は、画面を俺に向けた。蜜は膝の上に対面に乗ってるから、その画面は見えない。そこには一言だけ、『一応 衛宮張っといてるけど』と打ち込まれていた。
仕事が早い。
社長子息だからか、百の世界は俺たちより広い。当然 交遊関係も幅広く、色々な知り合いが至るところにいる。
百個人の繋がりを利用させてもらうのは心苦しいが、本人は「こういう時に使わないでいつ使うの?」とケロッとしている。
「とりあえず茅ヶ崎と一緒に犯人に会いに行くかな」
「ありとあらゆる体液でべっとべとの人たちに?」
「…そうだな」
百…他に言い方はなかったのか…?
「千歳…俺も行っちゃだめ?」
「蜜は…」
見せたくないな…。
「俺に関係無いことならいいんだけど…何か胸がざわざわする」
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