198 / 240
第198話
正直、タイミング的に衛宮が関係ないとは言いきれない部分もある。ただ、俺たちの思い過ごしということもなくはない。それこそ、確かめてみないと何とも言えない。
「じゃあ蜜は俺と見えないところで待ってような」
百が言うと、蜜は少ししてから頷いた。
「…分かった」
「茅ヶ崎の遊んだ後のは正直見せたくねーのよ。千歳も俺も」
「うん…」
蜜には綺麗なものだけ見せたいと思うのは大げさでも何でもなく、本気でそう思っている。知らなくていいものは知らないままでいて欲しいし、出来ることならずっと優しい世界で甘やかしていたい。
でも、それを蜜が望むかどうかだ。
蜜は俺の唇にキスをして、それから百にもキスをした。
「ごめんね…」
「何が?」
「色々…」
ここまで萎んでいる蜜は珍しい。俺は思わず百を見た。
「相当きてんのな」
柔らかい声でそう言って、百は後ろから蜜を抱えた。
「だってぇ…っ」
声に涙が混じる。
衛宮絶対許さん。これが衛宮と関係ないことだったとしても許さん。あんな矮小な存在が蜜を泣かせていいわけがない。
「まだ衛宮と関係あるかどうかも分かんねーじゃん?」
「そうだけど…っ」
「ほら、泣かない泣かない。ちーちゃんが怖い顔してるぞ」
「懐かしい呼ばれ方だな」
幼稚園の頃は ちーちゃんって呼ばれてたなぁ。
百が蜜の耳の裏にキスするのを見ながら、俺も蜜の髪や額にキスを落とした。
「…関係あったらどうしよう…」
「害虫駆除は得意だから任せなさい。千歳に」
「俺か。まぁ、そうだな」
「茅ヶ崎にケガさせちゃった…」
「それは本人が聞いたら喜びそうだ」
蜜の髪を撫でる。
すんすん鼻をすする蜜が愛おしい。
蜜の肩越しに、百が俺を見た。あのゴミクズどうする?って言ってる目だな、これは。
「…百や千歳がケガさせられたらやだよ」
全く。本当に可愛い女王様で困る。
「大丈夫。千歳は俺が守るから」
「千歳、心臓ドキドキいってるよ?」
「今のはズルいだろ。百が悪い」
不意打ちにキュンとした。
「千歳と俺はね、蜜のためだけにいんの。余計なものは全部取っ払うから、安心しな」
「うん…」
蜜の体から力が抜ける。ふたりでその華奢な体を抱き締めてから、茅ヶ崎に連絡を取ってみた。
『あのオモチャに会いに行くのぉ~? いいよぉ、行く行くぅ~。でもぉ、夕飯食べてからねぇ~』
あ、茅ヶ崎はほんとの悪魔だ。オモチャ呼ばわりした挙げ句、あいつら苦しめと思ってるぞ。
ともだちにシェアしよう!