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第218話
「あぁ、あれね」
最悪。と吐き出せば、千歳が宥めるように髪を撫でてくれる。
「あの靴 気に入ってたのに…。ねぇ、百」
ちょっと甘えるような声を出して百を見上げると、百の向こうに7組の教室の中がよく見えた。しかし花なんとかくんは分からない。誰だ。
「あれ俺がプレゼントした12万の靴だったんだよな」
「「「えっ」」」
思わず、といった感じで声が上がったのは、通りすぎようとしている教室の中から。
見れば大体が驚いた顔をしていたけど、そのうち3人くらいは顔色を悪くしてこっちを見ていた。
あの3人共犯?
「「…ふーん?」」
俺の両隣がにんまり笑ってる。
それを見たのか、はたまた俺たち全員の視線に耐えられなくなったのか、その3人はぎこちなくサッと視線をそらした。
でも顔は覚えたからな。
どれが花なんとかくんかはやっぱり分かんないけど!
「今度はBURBERRYの靴見に行くか」
「うん! そうする!」
何かよく分からんけど頷いとこ!
BURBERRYの靴っていくらするの? やっぱり10万超えなの?
「そんなこと言って、BURBERRYの靴贈られてきたらどうするんだ?」
千歳がひそっと尋ねると、百はケロッとして笑った。
「そしたら儲けもんじゃん?」
「悪い男だな」
千歳も笑う。
「でも蜜はBURBERRYの靴よりイ●ンで買える靴の方が良いんだもんな」
「うん」
BURBERRYの靴がどんなのか知らないけど。
「藤くんの口から『12万の靴』って、何度聞いても真実味しかないよねぇ」
「2000円を12万円に変える男…」
茅ヶ崎と委員長もひそひそしてるけど、委員長の発想はダメだと思うよ。詐欺だよ。
「ねぇ、委員長。ところで花なんとかくんってどこにいた人?」
見覚えありそうな人は何人かいた気がするけど、誰が誰だか分からない。
「あぁ。さっき真ん中の列に、」
「そんなくだらない男のことなんてどーでも良くない?」
「そうだな。蜜には必要ないやつだ」
委員長が言いかけたけど、百と千歳がそれを遮った。
確かにそうなんだけど。
「えっ騎士様たち嫉妬ぉ? ヤキモチ?」
茅ヶ崎の目が輝いてる。
「顔も名前も覚えられてないやつなんか嫉妬の対象にもならないな」
「そーね。そんなのに妬くほど心狭くないし?」
「須賀谷くんも藤くんも余裕だねぇ~」
「それはそうだろう。女王様に愛されてるからな」
ふふん。そうでしょ?
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