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第221話

俺が千歳と百に甘えるのなんて割といつものことなんだけど、今日はそこへ輪をかけてベタベタしてたもんだから、「何アレ」「きっっつ」とか陰で笑うのもいたけど。陰でコソコソ言うしか出来ない小者は所詮俺の敵ではない。 釣りたいのは衛宮くんだけだしね。 「ねぇ千歳。今日は耳障りなのが多いね」 その一言に千歳は深く微笑しただけ。 でも周りの耳障りな声はピタッと止んだ。ふーん。現金な奴ら。 コソコソ言うしか出来ない奴らは俺の敵にもなれないけど、俺は知ってるよ。千歳や百のこと、好きだったり憧れてたりするんだよね。 だから俺が邪魔なんだよね。 でもふたりとも俺の彼氏だから、絶対あげない。 俺は千歳の首に腕を回すと、背伸びをして軽く唇を重ねた。 「どうした?」 分かってるくせに。 千歳の手が腰に触れる。 「別に」 そう言ってもう一度キスすると、今度は百に手を伸ばす。 俺の意図を正確に理解した百は、俺を抱き寄せてキスをした。 俺は百の頬に指で触れる。すべすべだなぁ、なんて思いながら。 「……今日さぁ、今日…一緒にお風呂…入る…?」 俺の言葉に、千歳と百は顔を見合わせた。 「3人で?」 「絶対狭いぞ…」 「そうなんだけど…」 何かそんな気分になってしまった。 千歳が俺の頬に手を伸ばす。 「でも蜜の口からそんな言葉が出るとは」 「なー。意外っつーか、今まで彼氏とだって嫌がってしてなかったじゃん」 「だって嫌だったんだもん。でも…何か、ふたりとは、そういうのしたい気分なんだもん…」 「一緒に入るのは物理的に無理そうだから、千歳と俺で髪と体洗うのは?」 「いいよぉ」 「俺は百みたいに技術ないぞ。人の頭とか体ってどんな強さで洗えば良いんだ…?」 百に「教えてくれ」とか言ってるあたり、千歳は真面目だなぁ。 「じゃあ先に千歳の体洗ってあげよっか?」 千歳の肩に手を置いた百の唇が、楽しそうに弧を描く。 「それはそれで良いかもな」 千歳が微笑して、百の喉を指でなぞった。 周りで「ほぎゃぁ!!」って興奮した声も上がって密やかにざわめく。俺も間近で見てドキドキしてるんだけど…この場合どっちがどっちなんだろう…。 いかん! 思考が茅ヶ崎みたいになってるぞ! ふたりの頬に手を伸ばして、ぐいっと自分の方に顔を向けさせる。 「…優しくしてね?」 ふたりの向こう。真っ赤な顔して怒りを押し殺す彼の姿を見つけて、俺は思わず笑った。

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