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Sweet sweet operamauve
ところで俺の靴はどうなったかと言うと、帰る時にはすっかりなくなっていた。
触らなくて済んだのもだけど、視界に入ることもなくなってよかった。処分してくれたのかな。
あとは週末出かけて新しい靴買って来よう。AE●Nで。
そして俺は宿題を終えて夕飯も食べ終わった今、百の部屋の脱衣所で自分の体を見下ろしていた。
筋肉ほしいなぁ、って思うけど筋肉はつきづらい。かといって太りやすいかって言われたらそうじゃない。まぁつまり、何だ。お腹がね、ぺたんこだけどぷにぷになの。腹筋そんなないから。
今日別にえっちするわけじゃないし、俺の腹筋があろうがなかろうがきっとふたりには大したことじゃない。何ならあばら浮き気味なの何か言われそうだし。もっと食べろとか。
まぁいいや、お風呂入ろう。
浴室のドアを開けると、バスソルトの匂いがふわりと心地よく香る。先にざっと体を流して…。
「蜜、入るぞ」
「うん」
「あ、千歳 上だけ脱いで。濡れるし」
「分かった」
ドアの向こうでごそごそ音がする。
俺だけ裸なの、ちょっと恥ずかしいかも。前だけタオルで隠しとこ。
ドアを開けて入ってきたふたりは上半身だけ脱いでたけど…締まってます、体が。ずるい。
「蜜、髪濡らすぞ」
「うん」
「知ってたけど蜜細くね? ここ骨浮き出てんじゃん」
百の指が、背中の上の方に触れた。
「そんなとこ自分じゃ見えないもん。…っひゃ、」
つい、と背中を下までなぞられて、思わず変な声が出る。
「へぇ、背中弱いんだ」
「っん、だめ、くすぐったい…」
「百、遊ぶな」
シャワーと一緒に、上から千歳の声が降ってくる。
「可愛くて、つい」
「気持ちは分かるけどな。とりあえず何すればいい?」
「んー、じゃあシャンプー手に取って、蜜の髪に馴染ませて。んで、頭皮のマッサージするように…そうそう」
千歳に髪洗ってもらうの初めてかも。百と違う慣れない手付きに、ちょっときゅんとしてしまう。
「もうちょい強めでも良くない? 蜜どう?」
「うん。もうちょっと強くていいよー」
「つ、強く、って…」
「蜜の頭小さいけど壊れはしねーから」
百は笑いながら、ひたすらボディソープを泡立てている。
「洗い足りないところは?」
「だいじょーぶ」
千歳に答えながら、俺は曇った鏡を手のひらでこすった。鏡に映る自分の腕と、千歳や百の腕を比べてしまう。
全然違うな、って。
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