229 / 240
第229話
千歳が仕方ないとか言いながら満更でもなさそうに笑ってる。
俺が先に耐えられなくなるとか、そんなことあるわけ………ちょっとありそうだな…。
でも、怒ってるんだから。
これはヤキモチじゃなくて…え、何だろう…。
何か冷静になると…百が衛宮くんの元彼可愛いって言うのとか、衛宮くんの元彼に理解あること言うからイライラしたわけで…。
……えっと……嫉妬、かな。
だって、これは百が悪くない? 俺と付き合ってるのに他の褒めたり、庇うようなこと言うから!
………うん、嫉妬…かな…。
大人しくなった俺を、千歳と百が見てるのが分かる。
「蜜ー」
「……なに」
「キスしていい?」
「っ…、だ…だめ」
俺のバカ…。
「そっかー。じゃあ千歳、ちょっとデコ貸して」
「仕方ないな」
百が俺の目の前で千歳の額に口づけた。それから目元にも。
千歳のキスは優しいけど、百のキスはえっちだ。そんなえっちなキス、俺以外にしたらダメでしょ。って言いたい。
でもそれだと俺が百にキスして欲しいみたいだし…。して欲しいけど。
「……千歳」
百にキスされた千歳を呼ぶ。頬を指差すと、千歳は苦笑いしながら俺の頬に唇を寄せた。
百はそれを見ながら笑って、化粧水とコットンを手に取った。そうだ。俺がもっかいって言ったんだ。
「千歳、先に風呂入ってきていーよ。俺、蜜のマッサージとかしてるし」
「それでもいいけど…知らない男の香水落としてきた方がいいんじゃないか?」
「えー、そんな匂う?」
「匂う匂わないよりも、単純に気にくわない」
「ん?」
俺の顔にコットンを滑らせながら、百が千歳を見た。
「百に知らないやつの匂いがついてるのが単純に気にくわないから、落としてきてくれ」
千歳のめちゃくちゃストレートなお願いに、百が唇をきゅっと引き締めた。これは…。
「…百が照れるなんてレア」
「蜜、じっくり見るのやめて」
千歳のヤキモチに唇緩んじゃいそうだったんだね。
「蜜の顔やったら入ってくる」
「そうしてくれ」
けどまー、知らない男の香水ついてるのは俺も嫌。百のシャンプーとかボディソープとか柔軟剤の匂いがいいな。
「蜜、マッサージは後でな」
「しょーがないね。この香水の匂い俺も嫌いだもん」
「これムスク系じゃねーの。甘さ強めの」
「ムスク系の匂いは好きだけどそれは嫌い」
勝手にマーキングされた気分だから嫌い。相手にそんなつもりないのは分かってるんだけどさ。
ともだちにシェアしよう!