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第230話

「はーぁ。それにしても、不誠実な男」 「衛宮か?」 「うん。ま、俺も付き合いながら全然気持ちは育たなかったし、人のこと言えないけど」 百がお風呂に行ってから、千歳の膝に頭をのせてごろりとラグに転がる。 「不誠実な男が蜜には執着するんだな」 千歳の手が俺の髪をゆっくり撫でるのが気持ちいい。 「都合よく扱えなかったからでしょー?」 「衛宮は一般的に見てカッコいい部類に入るからな。多少ワガママに振る舞っても許されて来たんだろう」 「どんなに好きでも物のように扱われたら腹立つ人だって少なくないと思うけど」 俺の言葉に、千歳はちょっと笑う。 「それは俺も同意だ。けど、同年代でそれを説いてくれる相手もそういないだろう。本気で衛宮のことを好きだったらしてくれるかも知れないが、それを衛宮が正面から受け止めるとは思えないな」 「あー…」 それはそうだね。確かに。 「…今までの子は上手に別れて来たのかな」 「高校が別になったら会う機会も少なくなるだろうし、部活始めたとか会えない理由を色々作って自然消滅は狙えるな。遠くの学校に通えば尚更」 「うーん。なるほど」 「嫌がらせしてきた元彼は、衛宮の方が自分の理想に合わないって振ったんだろう。蜜がいたし」 理想、ねぇ…。 「千歳って理想の人とかいるの?」 「理想? そうだな…」 千歳の指がするりと耳裏をなぞる。くすぐったくて肩が跳ねてしまう俺に、千歳の唇にイタズラっぽい笑みが浮かんだ。 「天使だとか言われるくらいに可愛くて、超絶ワガママでたまにツンデレで淋しがりの甘えん坊だな」 「趣味最悪じゃん」 「仕方ないな。好きなんだから」 「そんな子2人といないよ」 「だろうな」 ってゆーか俺別にツンデレじゃないし。淋しがりでもないし。甘えん坊ではあるけど。 「俺よりはるかに性格良くて可愛い子がいたらそっち行く?」 「蜜よりはるかに性格良くて可愛い子がいてもその子は蜜じゃないからな」 「ふーん」 素直に喜べない俺ってほんと性格可愛くない。 そんなに好きなの? ありがと。くらい言えればいいのに。 「蜜は?」 「なに?」 「理想の人」 「俺の理想?」 そんなの。 「可愛くない性格と超絶ワガママを受け入れてくれる器の大きい男前と美形だよね」 「そうなのか?」 「可愛いってもっと言ってくれたらもっと嬉しいけど」 体を起こして、千歳の唇にキスをする。 百早く出てこないかな。キス禁止とか言ったけど、やっぱり俺が耐えられなかった。

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