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第231話
ラグの上でゴロゴロしていると、百がお風呂から上がってきた。
「百」
俺はラグに寝そべったまま百に向かって両手を広げる。
俺を抱え起こした百からは、俺と同じ匂いがした。うん、安心する。
首に腕を回して、ぴったりくっつく。
「マッサージは?」
「後でいい。今は百を堪能する時間」
「そ? じゃあ心ゆくまでご堪能ください」
百の笑いを滲ませた声が耳朶を撫でる。
「…キス禁止は解除だから、してもいいけど」
この言い方も可愛くない。素直にしてって言えればいいのに。でも百はそんなの気にしないで、優しく笑って俺の唇にそっと触れた。
「さて、じゃあ俺は風呂借りるな」
千歳は俺の髪を撫でるとお風呂へ。
俺は百の首筋に鼻をくっつけて肌の匂いを吸い込む。何となく、すっきりとした甘さがある、気がする。
後で千歳の肌も嗅がせてもらおう。
変態っぽいかな…。
「蜜?」
「ん」
首筋に軽く噛みつくと、くすぐったいって笑われる。そのままじゅぅっときつく吸い付くと、百の肌にじわりと赤い色が滲んだ。
なるほど、これがキスマーク。
「あ。」
この位置だと制服で隠れないじゃん。やば。
「…どうしよ。百がえっちな子だと思われちゃう」
「千歳にもつければだいじょーぶじゃん?」
「そうかな?」
「蜜にもつければ大丈夫でしょ?」
目を細めて笑う百の指が、俺の首筋をそっとなぞる。くすぐったいはずなのに、そこに何でか官能的な何かが見え隠れした気がして顔が熱くなった。
…百はえっちな子だ。
とりあえずまた抱きついてキスをして、百をしっかり堪能する。
それで気が済んだら脚のマッサージをしてもらった。
千歳がお風呂から上がる頃には俺はすっかり機嫌を直して、百の膝の上でネイルオイルを塗ってもらっていた。
「千歳、ちょっと」
「? 何だ?」
百に呼ばれて、千歳が素直に隣に座る。
俺は百の膝に乗ったまま千歳の首に腕を回して、鼻をくっつけてみた。うん、同じボディーソープの匂い。
千歳の肌は何か…優しい匂いがする。
「…これは…?」
千歳が困惑して百を見るのが分かった。俺は構わず首筋に唇を当てて吸い付いた。
「………あれぇ?」
千歳の肌は百ほどくっきりつかない。もいっかい。
「おい、百、これは…?」
「キスマつけたいみたい。ほら」
「あー…」
百の首筋にくっきりついたそれを見たんだろう。なるほどなー、みたいな声だった。
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